子供は大人よりもロボットを信頼するようです。

スウェーデン王立工科大学(KTH)は最近、3〜6歳の幼い子供を対象とした心理実験で、大人とロボットの言い分が異なる場合、子供たちはロボットの方をより信用することを発見しました。

3歳にもなると子供は大人の言うことは信用できないと感じるようになるのかもしれません。

研究の詳細は2024年4月13日付で学術誌『Computers in Human Behavior』に掲載されています。

目次

  • 大人vsロボット!子供はどっちを信頼する?
  • 子供は基本的に「ロボット」の方を信頼する!

大人vsロボット!子供はどっちを信頼する?

子供は大人とロボットのどっちを信頼するのか / Credit: canva

昨今のロボット技術の発展にともない、子供たちが何かしらロボットと触れ合う機会は増えつつあります。

その一方で、ロボットとの交流が子供たちの学習と発達にどのような影響を与えるかは知られていません。

中でも研究者たちは特に、大人とロボットの意見が食い違ったとき、子供たちがどちらを信頼するのかを理解したいと考えていました。

もしロボットの信頼度が高ければ、教育現場へのロボット先生の導入により、意欲的かつオープンマインドな学習を促進できると考えられます。

そこで研究チームは今回、オーストラリア・アメリカ・カナダ・イギリスから集めた111名の小児(3〜6歳)を対象にオンライン実験を行いました。

実験では、子供たちの見慣れた物に大人とロボットがそれぞれ、その名称を答えるという動画を見せました。

下が実験に使用された画像で、子供たちに馴染みのある「ブラシ」「お人形」「ボール」「クマ」の4つが用意されています。

子供にも馴染みのある対象物にラベリング。正しいラベル(左)と間違ったラベル(右) / Credit: Rebecca Stower et al., Computers in Human Behavior(2024)

そしてこの実験では、子供たちを3つのグループに分け、第1グループではロボットが間違った名前を答える(大人は正しい名前を答える)、第2グループでは大人が間違った名前を答える(ロボットは正しい名前を答える)、第3グループではどちらも本当のことを言う、という違いを付けました。

そして、この見慣れた物へのラベル付けの後、今度は子供たちが見たことのない意味不明な架空の物体4つに対して、大人とロボットが名前を答える動画を見てもらいました。

下の画像が実験に使われたものです。見れば分かる通り、意味のない物体で正式名称もありません。これに対して例えば大人は「モディ」「ゴビ」「モゴ」「ブリケット」と、ロボットは「トマ」「ダヌ」「ネヴィ」「ターヴァル」と適当な名前を子供たちに提示します。

2段階目の実験では存在しない対象物に適当なラベリングをする様子を見せた / Credit: Rebecca Stower et al., Computers in Human Behavior(2024)

そして子供たちに、大人とロボットどちらが正しい答えをしていると思うかを答えてもらいました。

またこれらの実験を終えた後、子供たちに大人とロボットの「どちらに秘密を話したいか」「どちらを友達にしたいか」「どちらが賢いと思うか」「どちらを先生にしたいか」などの質問をしました。

すると、非常に興味深い結果が得られたのです。

子供は基本的に「ロボット」の方を信頼する!

3つのグループごとの結果を見てみると、当たり前ですが最初の見慣れたものへのラベル付で、正しい回答をした方を子供たちは信頼する傾向がありました。

つまり、ロボットが間違った名前を答える動画を見た後だと、子供たちは2つ目の意味不明な物体に名前を付ける動画では、大人の答えた名前が正しいと考えました。

逆に最初の動画で大人が間違った名前を答えていると、2つ目の動画では、ロボットの言うことが信頼できると答えています。

しかし問題は3つ目のグループ「大人とロボットどちらも正しい名前を答える」の場合でした。

とても興味深いことに、この場合子供たちは、2つ目の意味不明な物体の名前を答える動画で「大人よりロボットの方が信頼できる」と答えていたのです。

実験イメージ。下は3つのペアごとのラベリング / Credit: Rebecca Stower et al., Computers in Human Behavior(2024)

それに加えて、最後に聞いたどちらを先生や友達にしたいか? という質問では、子供たちはロボットの方が良いと答えたのです。

つまり子供たちは全体的に、大人よりロボットを友達や先生にしたいと思っていたのです。

今回の実験だけでは、なぜこのような結果に偏るのかは正確には判断できません。

ただ実験を見る限り、子供たちは嘘を言う方が信頼できないときちんと判断しています。そのため同条件だと、大人よりロボットを信頼するという今回の結果は、子供たちが普段の生活の中で「大人は間違ったり嘘を言う」と感じいてる可能性が考えられます。

確かに、子供の相手をするときに私たちは適当にあしらったり、答えにくい質問に嘘を言ってしまうことがあります。3歳頃になると子供たちもそれを敏感に感じ取って「大人はあてにならないな」と考え出すのかもしれません。

子供は大人よりロボットを信頼する? / Credit: canva

しかし、この実験結果は、6歳の年長児に近づくほど大人を好む傾向が有意に強くなったといいます。

つまりこの年齢になってくると、ロボットよりは人間の方が信頼性が高いという感覚が身についてくるのだと考えられます。

年齢的な問題を考慮すると、1~3歳の子供は、大人の言うことをはねつけ自分の意見を通そうと考え出すイヤイヤ期という段階にあるため、これも関係している可能性があるでしょう。

また子供は人間とそうでないものの違いに対して先入観を持たないため、大人への不信感から人間以外を信じてしまうということがあるのかもしれません。

童話などでよく描かれる、子供が怪物にそそのかされて悪いことをしてしまうという展開も、こうして見ると間違っていないのかもしれません。

いずれにせよ今回の知見からは、教育現場へ「ロボット先生」を導入すると子供たちの学習効果が高まるなど、ポジティブな可能性を示唆できると研究者は語っています。

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参考文献

Young children are more likely to trust information from robots over humans
https://www.psypost.org/young-children-are-more-likely-to-trust-information-from-robots-over-humans/#google_vignette

元論文

When is it right for a robot to be wrong? Children trust a robot over a human in a selective trust task
https://doi.org/10.1016/j.chb.2024.108229

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。

情報提供元: ナゾロジー
記事名:「 「大人は信用できない?」子供は大人よりロボットの言葉を信じると判明!