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専門家によると、パラソーシャル関係は悪性で深刻な場合だとストーカーや犯罪に繋がる恐れがあるものの、ほとんどは健全で良好なものだといいます。
特にパラソーシャル関係は現実に付き合いのある友人や知人と違って、相手に拒絶されたり不親切にされる心配がありません。
それゆえに人々が精神的なリスクなく、安心して他者との結びつきを築くにはうってつけなのです。
しかし一方で、人々が現実の双方向的な関係にパラソーシャル関係をどう捉えているのか、実際の知人関係よりも高い満足度を得ているのかがわかっていません。
そこで研究チームは今回、イギリスとアメリカ在住の一般人を対象に、パラソーシャル関係をどう認識しているかを新たに調査しました。
ここでは主に同様の調査を2回に分けて行っており、1回目は参加者1688名(16〜78歳)を、2回目は参加者1087名(18〜70歳)を対象としています。
参加者にはそれぞれ「強いパラソーシャル関係」「弱いパラソーシャル関係」および「強い双方向関係」「弱い双方向関係」の4つに該当する人を想定してもらいました。
例えば、強いパラソーシャル関係は毎日欠かさずチェックするほどの推しYouTuberやその他の著名人のことで、強い双方向関係は親友や恋人、弱い双方向関係はそこまで絆の深くない友達や知人、同僚、ご近所さん等を指します。
参加者はこれら4つの関係性から得られる感情的な満足度を評価するためのアンケートに回答しました。
例えば、「その人はあなたが悲しんでいるときに励ましてくれるか」といった質問に7段階(1:最も効果が低い〜7:最も効果が高い)で答えます。
データ分析の結果、参加者の52%が何らかの「強いパラソーシャル関係(推しのいる状態)」を持っており、そのうちの36%がYouTuberで最も多いことがわかりました。
そして参加者の回答を
・自分の悩みや欲求がどれだけ満たされるかを示す「欲求の充足(Need fulfilment)」
・共感やサポートがどれくらい得られるかを示す「反応性(Responsiveness)」
・その関係にどれだけ親しみや心理的距離を感じるかを示す「親密さ(Closeness)」
で評価しました(下図を参照)。
その結果、チームの予想通り、最も感情的なサポート効果が強かったのは親友や恋人を含む「強い双方向関係」でした。
ところが、それに次いで人々に高い感情的な満足度を与えていたのは、推しのYouTuberを含む「強いパラソーシャル関係」だったのです。
これは実際に面識のない人や架空の人物であっても、強い親近感や友情を抱いていれば、現実空間の知り合いや同僚と交流する以上に私たちを幸福にしてくれることを示すものです。
これを受けて、研究主任のヴェロニカ・ラマルシェ(Veronica Lamarche)氏は「パラソーシャル関係はたとえ実際に会うことができなくても、精神的に落ち込んだときに自分を正当化しサポートしてくれる大切なツールになり得るでしょう」と話しました。
もし現実の人間関係がうまくいっておらず、悩みを相談できる知人もいなければ、自分だけの「推し」を見つけるといいかもしれません。
参考文献
YouTubers cheer people up more than casual friends
https://www.essex.ac.uk/news/2024/05/23/watching-youtube-cheers-people-up-more-than-meeting-casual-friends
Parasocial Relationships = Healthy? YouTubers Might Make Us Happier Than Our Friends Do
https://www.iflscience.com/parasocial-relationships-healthy-youtubers-might-make-us-happier-than-our-friends-do-74367
元論文
People perceive parasocial relationships to be effective at fulfilling emotional needs
https://doi.org/10.1038/s41598-024-58069-9
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
ナゾロジー 編集部