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その中で研究チームは新たに、植物のミニチュア化をもたらした要因として、屋久島に住む草食動物の「ヤクシカ」に注目しました。
ヤクシカは屋久島とその近くにある口永良部島(くちのえらぶじま)にのみ分布する日本の固有種です。
これまでの研究で、小型化した植物はシカにとって食べにくいことがわかっています。
そこでチームは「屋久島の植物のミニチュア化はヤクシカの採食圧によって引き起こされたのではないか」と仮説を立てて、検証を開始しました。
チームは2020〜2022年にかけて、ヤクシカが好む植物30種と好まない植物10種の合計40種を選び、そのサイズを測定しました。
また各種ごとに、他の島に分布する同じ種とサイズ比較をしています。
その結果、チームの予想通り、ヤクシカが好んで食べる植物の場合、屋久島の種は他の島の種に比べて、およそ半分から10分の1程度にまでミニチュア化していることが判明したのです。
他方で、ヤクシカが好まない種では、屋久島でも他の島でもサイズに変化がありませんでした。
また植物のミニチュア化に気象条件や土壌栄養分はまったく関係していなかったことから、屋久島の植物が小さくなったのはヤクシカに食べられないための適応進化であると結論されました。
チームはこれほど大規模なミニチュア化が発生した要因として、屋久島におけるヤクシカの個体密度の高さが大いに関係していると指摘します。
屋久島にはヤクシカの天敵となる動物がいないため、歴史的に彼らはのびのびと繁殖を続けてきました。
2008年の調査によると、屋久島の高原域には1平方キロあたり14〜39頭のヤクシカが生息しているとされ、これは本州のシカに比べて10倍以上の高密度となっています。
結果、ヤクシカに食べられやすい植物たちが淘汰され、ヤクシカに食べられにくい小型化した植物たちが生き残るというミニチュア化の進化が起きたのでしょう。
参考文献
屋久島のミニチュア植物群の進化はシカの採食圧が原因だった! 80種にわたる植物の大規模な収れん進化の解明
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2024/05/press20240510-03-deer.html
元論文
Deer grazing drove an assemblage-level evolution of plant dwarfism in an insular system
https://doi.org/10.1111/1365-2745.14309
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
ナゾロジー 編集部