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2024年の1月1日に石川県で起きた震度7の地震は、お正月を過ごす多くの人々に強い衝撃を与えました。
しかし能登半島ではそれ以前から、小さな地震が高頻度で起きていました。
能登半島では2020年末から、数百回の小規模な地震に見舞われています。
これらは「群発地震」と呼ばれ、大きな本震に続く余震という一般的なパターンとは異なり顕著な主震が存在せず、連続した小さな地震が続きます。
しかし群発地震が何をきっかけに発生するかは、まだよく知られていません。
そこでMIT(マサチューセッツ工科大学)の研究者たちは、地震のパターンに何らかの規則性や相関関係があるかどうかを調べるため、過去11年間の能登半島の地震活動を詳細に調査しました。
すると地震が活発化する2020年より前では、地震のタイミングと他の要因がリンクしている様子はみられなかったものの、地震活動が活発化した2020年以降、地震の発生パターンが地震速度と相関関係にあることを発見しました。
「地震速度」は地震波が観測点間をどのくらいの速さで伝わるかを意味しており、地下の構造によって大きく異なります。
そこで地震速度の変動とリンクしている要因を調べたところ、岩盤の裂け目に溜まる水の水圧(間隙水圧)と連動していることがわかりました。
地下の岩盤に水が溜まると、岩盤の物性が変化して地震の伝達速度が変化します。
さらに岩盤の物性変化は地震の発生を促す可能性があります。
ただ問題はそれらの水がどこから来たかです。
研究者たちは岩盤の裂け目に溜まる水は、もともとは雪や雨だったものも含まれていると述べています。
つまり雪や雨が降って地盤に水が溜まり地盤の性質が変化することで地震の伝達速度が代わったり、地震が起きやすくなっていたのです。
研究に携わったフランク氏は「地震のタイミングは激しい降雪を観測した時期と非常によく一致しており、2つは物理的なつながりがあると我々は考えている」と述べています。
研究者たちは今後、雪や雨と地震の関係が世界の他の地域でみられるかを調べていく予定です。
もし他の地域でも同じようにタイミングが重なっている場合、雪や雨は群発地震発生の普遍的なトリガーとして機能していることになるでしょう。
参考文献
Study: Heavy snowfall and rain may contribute to some earthquakes
https://news.mit.edu/2024/study-heavy-snowfall-rain-may-contribute-to-earthquakes-0508
元論文
Untangling the environmental and tectonic drivers of the Noto earthquake swarm in Japan
https://doi.org/10.1126/sciadv.ado1469
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部