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また専門家らはこれまで、サイコパスを見分けるための行動特性についても研究してきました。
例えば、サイコパスは相手の目をジッと見つめることがわかっています。
普通の人であれば、会話相手の目を見つめる長さはせいぜい数秒程度で、一度目を逸らした後に再び目を合わせることを繰り返すのが一般的です。
ところがサイコパスは不快になるほど相手の目を執拗に見つめ続ける傾向があります。
それから手を使ったジェスチャーが多いのも特徴の一つです。
これには自分の正当性をアピールしたり、相手を騙すための説得力を持たせる目的があり、警察の取り調べの最中など、大仰な身振りを使うことが多いといわれています。
さらにここ1〜2年の研究で、サイコパスによく見られる新たな行動特性が明らかになってきました。
それが「会話中に頭を動かさない」ことです。
これに関する研究は2021年に米ニューメキシコ大学(UNM)により報告されました(Journal of Research in Personality. 2021)。
チームはこの調査で、アメリカの刑務所に収容されている507名の男性の受刑者を対象に、サイコパス特性の程度を評価する調査「Psychopathy Checklist-Revised (PCL-R)」を行いました。
ここでは125項目の質問が載っている検査用紙をもとに、面接官がインタビュー形式で受刑者のサイコパスレベルを評価します(1〜4時間)。
同時にインタビュー中の様子をカメラで録画し、その後、AIの追跡アルゴリズムを用いて受刑者の頭の動きを測定しました。
その結果、サイコパス特性のスコアが高い受刑者ほど、面接官との会話中に頭を動かすことがほとんどなかったのです。
さらに同チームは、これと同じ調査を213名の女性の受刑者でも実施しました(Personality and Individual Differences, 2023)。
すると男性の受刑者とまったく同じように、サイコパス特性の高い女性受刑者ほど、会話中に頭をほとんど動かさないことが示されたのです。
これは男女ともに、サイコパス特性と頭の動きの少なさが密接に関連していることを示しています。
一体なぜサイコパスは会話中に頭を動かそうとしなかったのでしょうか?
私たちは普通、他者とコミュニケーションを取る際に、言葉だけでなく身振り手振りを用いたボディランゲージによっても意思疎通を図っています。
中でも頭の動きは、例えば会釈をしたり、うなずいたり、首を横に振ったりと、相手に挨拶や同意、反対など様々なメッセージを伝える方法として非常に有用です。
ところがサイコパスはそもそも、相手の考えや気持ちを理解したり、共感する能力が欠如しているため、私たちのように正常な意思疎通や心のコミュニケーションが成り立ちません。
そうした共感能力やコミュニケーション能力の欠如が「頭の動きの無さ」に表れていると考えられるのです。
さらに研究者らは、サイコパスが共感能力やコミュニケーション能力を欠如する原因には「扁桃体の異常」が根本にあると指摘します。
扁桃体とは情動や感情の処理に関わる脳領域の一つで、サイコパスでは扁桃体の活動が健常者に比べて低いことがわかっています。
こうした脳の根本的な異常が感情処理や対人交流に影響を及ぼして、相手の気持ちや考えがわからなくなっていると指摘されているのです。
いずれにせよ、目の前の相手がまったく頭を動かなさいようであれば、サイコパスかもしれないのでご注意を…
参考文献
Psychopathic women tend to move their heads very little when talking to other people
https://www.psypost.org/psychopathic-women-tend-to-move-their-heads-very-little-when-talking-to-other-people/
Psychopaths don’t move their heads when talking
https://bigthink.com/neuropsych/psychopathic-stare/
元論文
Automated patterns of head dynamics are associated with psychopathic traits in incarcerated women
https://doi.org/10.1016/j.paid.2022.111904
Quantifying the psychopathic stare: Automated assessment of head motion is related to antisocial traits in forensic interviews
https://doi.org/10.1016/j.jrp.2021.104093
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
ナゾロジー 編集部