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溺れている人を助けることは簡単ではなく、助けに水中に飛び込んだ人が犠牲になる二次被害も後を絶ちません。
二次被害を起こさずに溺れている人を助ける1つの方法は、「救命浮輪」を用いることです。
しかし、溺れている人に上手く浮輪を投げ込むことはかなり困難です。さらに離れた場所で溺れている人に対しては浮輪を届ける手段がありません。
中国のドローン会社「Didiok Makings」が開発した救命浮輪ドローンは、そんな救命浮輪の限界を打破しています。
この浮輪型ドローンは、溺れている人の元へ飛んでいくことができ、そのまま救命浮輪として助けることができるのです。
目次
プールや海、または船に設置されたオレンジ色の救命浮輪を見たことがある人は多いでしょう。
人が海に落ちた場合にこの救命浮輪が活躍します。
救命浮輪と船をロープで結び、溺れている人の方向へ頭上を越えるように投げて引き寄せることで、彼らが浮輪かロープをつかむことができます。
とはいえ、溺れている人の方向に正確に救命浮輪を投げるのは簡単ではありません。
それに、溺れている人がかならず救命浮輪が届く距離にいるとも限りません。
遠くで溺れている人に対して、救命浮輪は役に立たないのです。
だからといって、素人が助けるために水の中に入れば二次被害が生じかねません。
そのため救助を要請しますが、いつでも救助隊員が間に合うわけではありません。
そこで中国のドローン会社「Didiok Makings」は救命浮輪とドローンを組み合わせた救命浮輪ドローン「TY-3R」を開発しました。
TY-3Rは、その見た目の通り、クアッドコプターと救命浮輪が組み合わさったものです。
コントローラーで操作してドローンを飛ばし、最高速度47km/hで溺れている人の元へ届けることができます。
そしてドローンが着水すると、モーターが停止。
ドローン自体が浮輪として機能するため、溺れている人は救助隊が到着するまでしがみつくことができます。(大人2名まで)
Didiok Makings社によると、ドローンは完全防水性で設計されており、水深1mに30分間沈められても耐えることができるという。
つまり、着水して救命浮輪となった後は、壊れてしまうのではなく、引き続きドローンとしての機能を保つことができるのです。
ちなみに、ドローンにはカメラも搭載されており、リアルタイムの映像がコントローラーの画面に映し出されます。
また水面では1km離れていても、コントローラーを用いてドローンを遠隔操作できるようです。
これらの機能により、はるか遠くで溺れている人に対しても、画面を見ながら操作して救命浮輪を届けることが可能です。
TY-3Rは、1回の充電で10分以上稼働できるため、届けている最中にバッテリーが切れる心配も無いでしょう。
では、溺れた人が救助隊に助けられた後、ドローンはどうなるのでしょうか。
Didiok Makings社によると、ドローンのボタンを押すことで、ドローンが水面から飛び上がり、もともと設置されていたGPS座標まで自動的に飛行して戻ることができるのだそうです。
現在、この救命浮輪ドローン「TY-3R」は、Didiok Makings社のWebサイトから購入可能であり、価格は1万1803ドル(約184万円)です。
想像以上に高額ですが、これで人の命が助かるかもしれないことを考えると、ビーチや船に設置してほしいという人は多いかもしれません。
もちろん、「ドローンを溺れている人の元へ正確に届けることができるのか」という操縦技術の課題は残りますが、素人が泳いで助けにいくよりは安全かもしれません。
浮輪にドローンを組み合わせるというのは単純な発想ではありますが、これは今後重要な技術となっていく可能性があります。
水難事故や、それに伴う救助者の二次被害は毎年のように発生する問題であるため、この救命浮輪ドローンをもっと安価で実現できれば、多くの命を救う事ができるかもしれません。
参考文献
Hybrid rescue drone flies out to swimmers and becomes a lifebuoy
https://newatlas.com/drones/ty-3r-flying-lifebouy-drone/
Water Rescue Drone TY-3R Flying Lifebuoy
https://didiokmaking.com/products/water-rescue-drone-ty-3r-flying-lifebuoy
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。