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そして性的興奮が収まると血流が戻って、性器が通常時の状態にまで収縮します。
これが勃起の科学的な仕組みですが、ではオスワニの性器はどのような組織でできていたのでしょうか?
ケリー氏らがワニの男性器を詳しく解剖したところ、ヒトと同じような海綿体は存在しないことが判明しました。
オスワニの性器には血流を取り込むシステムもなく、代わりにコラーゲン繊維が網の目状に密に詰まっていることで性器が作られていたのです。
そのため、性器に膨張と収縮の機能はなく、常に勃起しているような硬い状態を保つ仕組みになっていました。
さらに性器の付け根を調べると、複数の筋肉や腱のセットが見つかります。
ワニはこの付け根の筋肉や腱をゴムバンドのように伸ばしたり縮ませることで、性器を総排出腔から出し入れしていたのです。
ケリー氏らはワニの性器と、平常時と勃起時を使い分けている哺乳類や鳥類、カメの標本から得た性器を使って、血液の代わりに生理食塩水を満たす実験をしてみました。
すると哺乳類、鳥類、カメの性器は生理食塩水によって長さや直径が変わりましたが、ワニの性器だけは長さも形もまったく変わりませんでした。
この結果からケリー氏は「ワニの性器は他の多くの動物とは仕組みがまったく異なることが確認された」と述べています。
男性の皆さんからすれば、性器にOFFモードがなく、常に臨戦態勢にあることは不自由きわまりないと感じるでしょう。
しかしワニからすれば、性器のON・OFFモードをいちいち切り替える方が面倒で、必要なときに格納庫から出し入れする方が楽チンなのかもしれません。
参考文献
The Alligator Penis Is Permanently Erect, But Pops Out Only When Needed
https://www.iflscience.com/the-alligator-penis-is-permanently-erect-but-pops-out-only-when-needed-73734
Schwing! Alligator Sports Always-Erect, Hidden Penis
https://www.livescience.com/27274-alligators-hide-pop-up-penises-internally.html
元論文
Penile Anatomy and Hypotheses of Erectile Function in the American Alligator (Alligator mississippiensis): Muscular Eversion and Elastic Retraction
https://doi.org/10.1002/ar.22644
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。