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将来的には、ドローンを用いた宅配業も誕生する可能性があります。
現在では荷物・フード配達のほぼすべてを人間が行っていますが、それらをドローンに任せることができるかもしれないのです。
しかし、これらドローン活用例のほとんどの分野において、ドローンの飛行時間がネックになっています。
小さなホビードローンであれば10分、産業用の高価なドローンであっても20~30分程度しか連続飛行できないのです。
このようにドローンは、「すぐに疲れてしまう小鳥のような存在」なのです。
では、この大きな課題をどのように解決することができるでしょうか。
その機械の小鳥がすぐに疲れてしまうのであれば、「再び飛べるようになるまで、木にとまって休めばいい」のです。
ホアン氏ら研究チームによって新しく開発されたドローンは、電線にとまって充電した後、再び飛行することができます。
このドローンは、他のドローンと大きく変わりませんが、その上部には、受動的に作動する電線グリッパーが備わっています。
そして、ドローンに搭載されたソフトウェアが、バッテリー残量が少ないことを検知すると、機体はカメラとレーダーを使用して最も近い電線を見つけます。
その後、機体は電線の下から上に向かって上昇。
グリッパー内に電線が入ると、グリッパーが閉じて、ドローンは電線にぶら下がることができるようになります。
この間、ドローンは電力を消費しないだけでなく、電線からバッテリーを充電することができます。
ドローン上部の充電器が、電線から直接電流を引き出すのです。
バッテリーが完全に充電された後は、グリッパーが開き、ドローンは再び飛行することができます。
実際にデンマークの空港の電線を使って行われたテストでは、重さ4.3kgのデモ用ドローンにて、バッテリーを5回充電し、2時間以上稼働させることに成功しました。
現在、研究チームは、この新しいドローン・システムが遠隔地や悪天候でも機能するよう改良を続けています。
このアイデアが広く普及するなら、ドローンの限界が大きく広がるでしょう。
「電線から遠く離れることはできない」という制限はあるものの、宅配業とはうまくマッチする可能性があります。
ほとんどの宅配先には電線が繋がっているため、そこに荷物を届けるドローンはいつでも充電できるからです。
とはいえ、今回の画像を見た人の多くは、「盗電になるのではないか」と感じたはず。
単に導入するだけでは、当然そのような結果になると考えられます。
そのため新しいドローン・システムを正式に導入するには、「充電した分の電気料金を支払う仕組み」も必要になってきます。
そうだとしても、依然としてこのアイデアは魅力的です。
もしかしたら将来は、小鳥たちに並んで、電線にとまって休憩しているドローンを見かけるようになるのかもしれません。
参考文献
Video: Crafty quadcopter sits on power lines to recharge
https://newatlas.com/drones/drone-operate-indefinitely-recharging-power-lines/
Non-stop drone operations enabled by overhead power line recharging
https://interestingengineering.com/innovation/non-stop-drone-operations-power-line-recharging
元論文
Autonomous Overhead Powerline Recharging for Uninterrupted Drone Operations
https://doi.org/10.48550/arXiv.2403.06533
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。