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基本的に人の性格は「若いうちに形成され生涯にわたってほとんど変わることがない」と言われています。
臆病な人は臆病なまま、短気な人は短気なまま、その個性がずっと続いていくというのです。
確かに、人にはそれぞれ死ぬまで変わらない気質があるかもしれません。
しかしここ数十年の研究で、個人の性格は長期にわたり安定することはあっても、永遠に固定化されることはなく、人生を通じて適度に変化しうることが示されています。
そこで研究主任のジョシュア・ジャクソン(Joshua Jackson)氏とアマンダ・ライト(Amanda Wright)氏は、先行研究をレビューして、性格の変化が起こるときに見られる重要な要因を特定しました。
それが以下の4つです。
第一の要因は、自分の性格を変えたいという願望や動機、欲求があることです。
また、性格が変わることに対して心理的にオープンであることです。
言われてみれば当然ではありますが、こうした前提条件が整っていなければ、勝手に性格が変わることはそうありません。
研究者らは、自分の性格を変える上で、具体的にどの部分を変えたいのか(例えば、短気な自分を変えたいとか)を明確化することが大事だといいます。
第二の要因は、性格を変えるために環境や行動を変えることです。
例えば、もしあなたが短気でイライラしやすい性格を直したいとして、ストレス要因の多い職場や都会にいるなら、そうした生活環境を変えることで、自分自身が嫌だと感じる性格が表に出にくい状態になります。
研究者らは、こうした環境の変化が性格を変えるきっかけ(トリガー)になると指摘します。
また環境の変化のほかに、セラピーに通うとか、結婚や出産などのライフイベントなどもトリガーの一部になるといいます。
特に「子供ができた途端、怒りっぽかった男性が急に丸くなった」という話はよく聞くでしょう。
トリガーは自らの習慣化された行動を修正するように働きかけることで、性格を変える大きな一歩を与えてくれます。
第三の要因は、この変化を自らに定着させるプロセスです。
トリガーによって性格の変化に一歩を踏み出せたとしても、その後に何もしなければ、性格はまた元通りになるでしょう。
ここで研究者らは、トリガーとなる行動を反復して、性格の変化を自らに定着させるような強化因子が必要になるといいます。
例えば、怠惰な自分の性格を直そうと思えば、1日に必ず外出する習慣をルーティンとして組み込むなどです。
また研究者らは、職場の社員の勤勉さを高めて持続させるために、報酬となる給与を上げることも強化因子になるだろうと例を挙げています。
最後に第四の要因は、ここまでの道のりで獲得された性格の変化を日常のあらゆるシチュエーションで応用できるように作業です。
いわば、実践です。
性格が本当に変わるということは、その特性が一部のシチュエーションだけでなく、生活の全体で発揮されることを意味します。
そのため、自らの変化した気質を可能なかぎり多くの場所で実践することが大事になると研究者は説明します。
以上4つのプロセスは、自分の性格を変えたい人に向けての”道しるべ”を提案するものです。
これを実践すれば必ず劇的な効果が現れるとは言えませんが、性格を意識的に変える手順として一つの参考になればと研究者は考えています。
参考文献
Research review suggests four key mechanisms are involved in changing one’s personality
https://medicalxpress.com/news/2024-03-key-mechanisms-involved-personality.html
How can personalities change? Review finds 4 key mechanisms
https://www.medicalnewstoday.com/articles/how-can-personalities-change-review-finds-4-key-mechanisms
A blueprint for personality change: Key mechanisms and stability forces
https://www.news-medical.net/news/20240319/A-blueprint-for-personality-change-Key-mechanisms-and-stability-forces.aspx
元論文
The process and mechanisms of personality change
https://doi.org/10.1038/s44159-024-00295-z
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。