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多くの鳥たちは少し多めの卵を産みます。
3匹のヒナが理想的な種では4個の卵、4匹のヒナが理想ならば5個の卵というように、卵の数は想定するヒナの数に「プラス1」したものになります。
これまで、この「プラス1」された卵は孵化の失敗・病気・捕食などによるヒナ喪失の保険として機能すると考えられてきました。
しかし新たに行われた研究によって、ヤツガシラと呼ばれる鳥たちでは卵を「プラス1」する理由が普通とは違う可能性が示されました。
ヤツガシラはユーラシアとアフリカの両方に広く分布している雑食(肉食より)の渡り鳥であり、日本でも冬になると少数のヤツガシラが渡来することが知られています。
しかしヤツガシラにはもう1つ、高い兄弟食いの頻度が知られていました。
これまでの研究で、ワシやタカなど多くの鳥類で兄弟同士の殺し合いが発生していることが知られています。
兄弟が少なくなれば親からもらえるエサが増えるという利点があるからです。
もし飢餓状態であれば、殺した兄弟を食べることもあるでしょう。
しかしヤツガシラの兄弟食いは親との共謀によって行われる点で大きく異なります。
ヤツガシラのヒナたちのクチバシや爪は、肉を切り裂くようには作られていません。
そのためヤツガシラの兄弟食いは、孵化直後の小さなヒナを親鳥が掴み、年長の大きなヒナの口の中に放り込む形式をとっています。
そこで今回、CSICの研究者たちは、ヤツガシラの兄弟食いが、病気や事故によって死んだ兄弟をエサとして有効利用する偶然に頼ったものか、あるいは卵を産む時期を調節した計画性のあるものかを調べることにしました。
ヤツガシラの兄弟食いは計画性のあるものなのか?
答えを得るため研究者たちは産卵前のヤツガシラの巣を2つのグループにわけて、一方のグループのメスに産卵を終えるまで追加のエサ(1日あたり25匹のコオロギ)を与えました。
すると追加のエサを受け取ったメスは平均して1個多く卵を産むものの、卵が多い巣では兄弟食いも多発することが判明します。
観測された兄弟食いは主に、孵化期間の最後に産まれた小さなヒナが犠牲になるパターンでした。
次に研究者たちは、卵が孵化するタイミングを計測し、孵化する1日前の卵を別の巣から移す実験を行いました。
目的は、追加の卵から誕生したヒナの存在が、元から巣にいる小さなヒナの共食いを防ぐかを調べることにあります。
すると追加の卵から産まれたヒナと、元から巣にいた小さなヒナの両方が食べられてしまったことが判明します。
この結果は、年長の大きなヒナがいる巣でうまれた幼いヒナは、全て兄弟食いの対称になってしまうことを示しています。
また兄弟食いの発生率が高い巣では、巣立ちに成功できるヒナ数が平均して2羽近く増えていたことがわかりました。
これらの結果は、産卵前にエサが豊富にある場合、ヤツガシラたちは余った栄養を保存するための方法として、追加の卵を産むという選択をとっていることを示しています。
そして追加の卵からうまれたヒナは年長のヒナの食糧庫として短い生涯を過ごした後、最後は親鳥のクチバシに掴まれて年長のヒナの口の中に放り込まれるのです。
余計な子供を食糧庫として使用するという戦略は、昆虫や爬虫類など「親が子の世話しない動物」では知られていました。
しかし子供を世話する種において子供を食糧庫として使う例が発見されたのは、ヤツガシラがはじめてとなります。
研究者たちは、同じような親の関与で計画的な兄弟食いを行っている種は、他にも存在する可能性があると述べています。
元論文
Extra Nestlings That Are Condemned to Die Increase Reproductive Success in Hoopoes
https://doi.org/10.1086/728883
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部