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化石の存在は古くから人類によって知られていました。
石器時代の遺跡では、クロマニョン人が巻き貝の化石から作った首飾りが見つかっています。
ただ彼らは化石の正体が何なのかは知らなかったでしょう。
人類が最初に化石について考察したのは、紀元前7世紀頃の古代ギリシアとされています。
その当時はすでに化石を「過去の生物」と考える向きがあったようですが、万学の祖・アリストテレスは「不思議な力で石の中に生まれるもの」と誤った見解を示していたそうです。
その後もレオナルド・ダ・ヴィンチを含む多くの偉人が化石について考察していますが、科学的な学問としては18〜19世紀になるまで実質的な進歩はありませんでした。
しかし1796年に、フランスの博物学者であるジョルジュ・キュヴィエが現生のゾウの骨格とゾウによく似た化石の詳細な比較研究をし、この化石が現生のゾウとはまったく異なる古代の絶滅生物であると結論付けました。
こうした命名されたのが「マンモス」です。
それから程なく、シベリアの永久凍土で氷漬けになったマンモスが発見され、キュヴィエの主張が決定づけられました。
そして1811年に、イギリスの古生物学者であるメアリー・アニングが魚竜や首長竜の化石を次々と発見し、その解剖学的な特徴について詳しい研究を始めます。
彼女の活躍をきっかけに化石研究が盛んになり、恐竜学の開拓へと繋がったのです。
それでは、化石はどのようなプロセスを経て作られるのでしょうか?
化石の作られ方にはいくつかのパターンがありますが、最も基本的なものは、死んだ動植物が堆積物(泥、砂、火山灰など)に埋められることで石化する方法です。
このとき、皮膚や筋肉などの柔らかい軟部組織は微生物によって分解されてなくなり、硬い歯や骨、殻だけが残されます。
ここに堆積物が積もっていくと、堆積物の中のミネラル(石の元となる成分)が歯や骨にゆっくりと染み込み、何百万年もかけて結晶化していきます。
このパターンを「石灰化(Permineralisation)」と呼びます。
このプロセスで骨などは石と同じような硬さとなり、まさに化石と呼ぶべき変化を起こすのです。
これと別に、生物の遺骸が堆積物中に埋まったものの、中で分解されるか溶けてしまったことでその生物の形をした空間だけが3次元的にポッカリと残されることがあります。
こうした鋳型のような化石を「印象化石(Impression fossil)」といいます。
貝殻のような海洋の無脊椎動物や陸上の植物などは、印象化石として残ることが多いようです。
それから樹脂に閉じ込められることで保存される「琥珀(Amber)」というパターンもあります。
樹脂は木の表面を流れ落ちる液体なので、琥珀として残るのは小さな昆虫がほとんどです。
琥珀は生物を丸ごと密閉してくれるので、生きていたままの姿で全体像を知ることができます。
また生物自体の体は残されていないものの、その足跡や巣穴、あるいは糞などが化石化したもの「生痕化石(Trace fossils)」と呼びます。
先の印象化石とよく似ていますが、生痕化石からはその生物がどんな動きをしていたのか、どんな巣に住んでいたのか、何を食べていたのかなどの生態を知ることができます。
そして最も化石化しにくい軟部組織が保存されるケースも稀にあります。
皮膚や筋肉、内臓、体毛、羽毛などは柔らかく分解されやすいので、ほとんど化石として残りません。
しかしながら、死んだ動植物が泥中などの低酸素環境にすばやく密封された場合、そこでは微生物が活動できないので、軟部組織が分解されることなくそのまま残されるのです。
こうした保存のされ方をすると、どんな大きな生物でもまるでミイラのように生前の姿を留めることができます。
実際に過去には、皮膚や消化管までほぼ完全に保存されたノドサウルスの奇跡的なミイラ化石が発見されました。
これは「史上最も完全な保存状態の恐竜」と称されています。
では最後に、恐竜が死んでから化石化するまでのプロセスを図解で追ってみましょう。
ほとんどの恐竜は力尽きて死ぬと、スカベンジャー(腐肉食者)と呼ばれる動物たちによって食い散らかされて、片付けられます。
しかし中には、死んだ後にすぐさま土砂に埋もれる、あるいは水辺で死んだ個体が水中に引き込まれて、底まで沈んでいくケースがあります。
こうして堆積物の中に埋もれることで、化石化へのチケットが手に入るのです。
ここでは恐竜の遺体の上に砂や泥が積み重なっていき、堆積物でサンドイッチされます。
こうして全身骨格が堆積物によって保護されると、他の生物に荒らされる心配がありません。
こうして堆積物の中に埋まった遺体は、先ほどの「石灰化」で説明したように、ミネラル分が骨の中に染み込んで石化していきます。
ことさらに積み重なった堆積物が長い長い年月をかけて石化することで、完全な岩盤層となります。
こうして出来上がった化石は、浸食によって岩盤が削られることで地表に現れるか、あるいは人々によって発掘されることで発見へと至ります。
こうしている最中も、未知なる古生物たちが発掘されるのを今か今かと待っていることでしょう。
参考文献
How do fossils form?
https://australian.museum/learn/australia-over-time/fossils/how-do-fossils-form/
Dinosaur Bones
https://www.amnh.org/dinosaurs/dinosaur-bones
東大古生物学の130年
https://www.um.u-tokyo.ac.jp/web_museum/ouroboros/v17n2/v17n2_sasaki.html
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。