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主観年齢は服装や言葉遣い、興味関心まで変化させます。
主観年齢が実年齢よりも高い人、「自分は実際よりも年を取っている」と考えている人は、主観的幸福感や認知機能が低く、抑うつの症状が多いなどの心身の健康維持にマイナスの影響を及ぼすとされます。
そのため本人の認知機能はそれほど衰えていなくとも、見た目が老けているというだけで、実際に健康にさまざまな悪影響が出る可能性があるのです。
そう考えると、見た目の若さにつながる美容に若いころから気を遣う必要性は高いと言えるでしょう。
シミ、たるみや白髪など加齢による見た目の変化は、紫外線との関係が大きいとされていますが、ストレスの影響も無視できません。
しかし、一概にストレスと言ってもそこには様々な原因があります。では一体どういった種類のストレスが見た目の老化にもっとも影響するのでしょうか。
ベルギーのルーヴァン・カトリック大学のステファン・アグリゴロエイ氏(Stefan Agrigoraei)らの研究チームは、今回の見た目の老化問題について「お金のストレス」に着目しました。
なぜなら「お金のストレス」は他の研究でも、肥満や依存症、睡眠不足など健康状態に悪影響を及ぼすことが報告されているからです。
実験に参加したのは25-75歳の男女302名です。
彼らは参加者の1995年と2005年時の顔写真を撮影しました。
そして参加者には実年齢をはじめ、主観年齢、お金や仕事、家庭に関するストレス、主観的な健康度を尋ねました。
また別で雇った参加者19名に、1995年と2005年時に撮影された顔写真の魅力度と見た目の年齢を評価してもらっています。
分析では、個人の収入、健康度、魅力度などの影響が入らないよう調整したうえで、金銭的ストレスの影響を調べました。
実験の結果、金銭的なストレスが低い人と比較して、金銭的なストレスが高かった人は見た目の年齢が実年齢よりも老けて見られる傾向がありました。
このような老けて見られる傾向は、お金以外の家庭や仕事のストレスでは関係性が確認されませんでした。
そして興味深いことに、金銭的なストレスは本人の感じる主観年齢との間に関連が見られなかったのです。
つまり「お金のストレス」を抱えている人は、自分では老けていないと考えている反面、実際には周りの人から実年齢よりも老けて見られていたのです。
ではなぜ「お金のストレス」は他人の目から老けて見られるようになるのでしょうか。
研究チームは「金銭的なストレスが大きいと、自分の外見に注意を払うことが難しくなり、自分では理解できないまま見た目の老化を加速させてしまう可能性がある」と推測しています。
このように周りから実年齢よりも老けて見られるようになると、その個人の行動やライフスタイルをに悪影響を及ぼし、心身の健康を損なう可能性があります。
また、前述したように「お金のストレス」は他のストレスと比較して様々な健康問題に悪影響を及ぼしやすい可能性があります。
なんにせよ周りから老けて見られると「自分はもう年だな」という感覚が生まれ、自分の年齢に適した生活や人間関係の維持が困難になり、無力感や孤独感に苛まれることになります。
収入を含めた金銭的な問題はなかなか解決が難しい問題ですが、「お金のストレス」と上手く付き合っていくためには、まず自分と他人の金銭的事情を比較しないことや、生きていくのに十分な最低コストを計算することが大切です。
SNSが普及したことによって「ランボルギーニを買いました!」などの投稿を見るだけでも、他者との経済的な比較をしてしまい、金銭的なストレスを引き起こす原因になります。
そのような余計な比較によるストレスを感じないためにも、自分の望む生活に見合った最低コストの算出は有益です。
具体的な数字を設定することで、自分は自分、他人は他人と切り離し、精神的な安定につながるでしょう。
参考文献
Money Stress Actually Makes You Look Older To Others, Study Finds
https://www.huffpost.com/entry/financial-stress-actually-can-make-you-look-older-to-others_n_579f589ce4b0e2e15eb65a93
元論文
Stress and Subjective Age: Those with Greater Financial Stress Look Older
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27422884/
A Systematic Review and Meta-Analysis of Subjective Age and the Association With Cognition, Subjective Well-Being, and Depression
https://academic.oup.com/psychsocgerontology/article/76/3/471/5846119
ライター
AK: 大阪府生まれ。大学院では実験心理学を専攻し、錯視の研究をしています。海外の心理学・脳科学の論文を読むのが好きで、本サイトでは心理学の記事を投稿していきます。趣味はプログラムを書くことで,最近は身の回りの作業を自動化してます。
編集者
海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。