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顔の造形によって印象は変化します。
たとえば、額が広く、目が大きく、顔の下部分にパーツが集まっている顔の人は、幼く、無垢で、信頼性が低いとの印象を抱かれます。
いわゆる童顔です。
一方で、顎が角ばっていて、目と眉の間が狭い顔の人は、有能であるという印象を持たれる傾向があります。
顔の印象を左右するのは造形だけではありません。髪型でも印象は変化します。
イエール大学のマリンヌ・ラフランス氏(Marianne LaFrance)らの研究によると、髪型が印象に与える影響について報告しています。
具体例を一つ上げると、肩にかかるくらいの黒髪の女性は、人当たりが良く、頭が良いと思われやすく、天然だという印象を抱かれる傾向があるようです。
このような顔の造形、髪型で印象が変化するのは、ある特定の容姿の人物はこういう性格であろうというステレオタイプが影響していると考えられています。
では顔の一部ではないですが、アクセサリー、特に多くの人が利用している眼鏡はどうなのでしょうか。
これは多くの人が実感している通り、眼鏡をかけている人とかけていない人では、確かに受ける印象が変化します。
しかしそれはどの様な印象の変化なのでしょうか? また眼鏡のタイプによって影響は異なるのでしょうか?
個人でもキャラクターでも眼鏡を掛けると色んな評価を耳にします。「無い方がよかった」、「賢そうに見える」、「仕事ができそうに見える」、では眼鏡は統計的にはどのような評価に偏るのでしょう?
学術誌「Swiss of Journal of Psychology」に報告されたウィーン大学のヘルムット・レーダー氏らの研究では、まさにそんな気になる点を調べてくれています。
実験では、参加者74名に、同一人物の眼鏡なし、縁あり眼鏡あり、縁なし眼鏡の顔写真を見て、魅力度や知的さ、信頼性などを評価してもらいました。
実験で用いられた顔写真は、眼鏡の有無と縁の有無以外の要素が印象の評価に影響を及ぼさないように、首元から上を撮影し、白黒に変換したものを使用しています。
ではこうした実験で、参加者はどのような評価を下したのでしょう?
実験の結果、眼鏡ありの時と比較して、眼鏡なしの時に魅力度と親しみやすさが高いことが確認されました。
一方で、眼鏡あり時には、眼鏡なしの時と比べて、より知的で、成功しているように見えることが分かったのです。
しかし縁なし眼鏡に関しては、眼鏡ありで見られた魅力度の低下がなく、眼鏡なしの時と同程度に魅力度が高いと評価されました。
さらに縁あり眼鏡と眼鏡なしの時と比べて、信頼性が高い印象を与えることもわかっています。
この結果は、顔の造形や髪型と同じように眼鏡の有無と縁の有無によって顔の印象が変化することを示しています。
ではなぜこのように眼鏡の有無で顔の印象に差が生じるのでしょうか。
研究チームは「眼鏡が顔の印象をどのように変えるかは、私たちが持っている、眼鏡をかけている人は知的で信頼できる人というステレオタイプに沿って変化している」と述べています。
つまり概ねどのような印象を抱かれるのかは、多くの人が簡単に連想できるようなステレオタイプから推測ができるということです。
しかしメガネの縁の有無で、魅力度と信頼性が違うという、予想もしなかった結果が実験を通して出てくるのが、興味深いところと言えるでしょう。
また縁あり眼鏡が魅力度の評価を低下させた理由としては、「健康的な個体」ではないとの印象を抱かれたからではないかと考えられています。
個体の健康度合いは、魅力度を評価する際に重要な要因です。
それ故、縁あり眼鏡をかけている人は、視力が悪いをことを示唆し、魅力度評価に影響したのではないかと考えられます。縁なし眼鏡は、縁あり眼鏡よりも存在感が薄く、魅力度を下げるに至らなかったのでしょう。
この検証結果をうまく活用すると、相手からどういう印象を持ってほしいかで、眼鏡をかけるか? あるいはどんなタイプの眼鏡を選ぶか? という判断がしやすくなるかもしれません。
たとえば、教師や医師、弁護士など相手に知性を感じさせる必要がある場合は眼鏡をかけ、一方で店舗の販売員や保育士などの親しみやすさが重要な場面では眼鏡をかけない方が良いかもしれません。
しかし知性と魅力度の高さが必要とされる場面では、縁なしの眼鏡のほうがいいでしょう。
縁なしの眼鏡は、知的で、成功しているように見える眼鏡のプラスの効果を得つつ、より誠実で魅力度が高い印象を与えることができるため、より適切であると考えられます。
参考文献
6 Messages Your Glasses May Be Sending People
https://www.psychologytoday.com/us/blog/fulfillment-any-age/201602/6-messages-your-glasses-may-be-sending-people
元論文
The glasses stereotype revisited: Effects of eyeglasses on perception, recognition, and impression of faces.
https://psycnet.apa.org/record/2011-25919-005
First impressions and hair impressions
https://www.academia.edu/26448123/First_impressions_and_hair_impressions
ライター
AK: 大阪府生まれ。大学院では実験心理学を専攻し、錯視の研究をしています。海外の心理学・脳科学の論文を読むのが好きで、本サイトでは心理学の記事を投稿していきます。趣味はプログラムを書くことで,最近は身の回りの作業を自動化してます。
編集者
海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。