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さらにGRB 221009Aは、それ以前に観測された最も明るいガンマ線バーストより約70倍も明るいことが分かりました。
研究者らは、これほどの規模のガンマ線バーストが起こる頻度は1000年から1万年に一度程度だろうと考えています。
IAPSの天体物理学者で研究主任のピエトロ・ウベルティーニ(Pietro Ubertini)氏は「ガンマ線バーストの観測は1960年代から始まっていますが、GRB 221009Aは間違いなく、これまでに観測された中で最も強いものです」と話しました。
一方で、GRB 221009Aが地球の「電離層」に与えた影響は調べられていませんでした。
電離層とは、地球の高度約60〜500kmの間に広がっており、下から順にD層(60〜90km)、E層(100〜120km)、F1層(150〜220km)、F2層(220km〜)に分けられます。
これらは主に宇宙から降り注ぐ強烈な電波やプラズマ、太陽風から地球を守るシールドの役割を果たしています。
また電波を反射することで、アマチュア無線や短波放送、ナビゲーションにも利用されています。
もし電離層に穴が開いたりすれば、地上に危険な宇宙線が到達し、生命に危険を及ぼしかねません。
そこでウベルティーニ氏らは衛星データなどを用いて、GRB 221009Aが電離層にどんな影響を与えたかを調べました。
衛星データを調べた結果、GRB 221009Aは電離層全体の電場を大きく撹乱していた証拠が見つかりました。
ガンマ線バースト自体が衝突していた時間は約13分に過ぎませんでしたが、電離層への影響は約10時間も持続していたのです。
加えて、その影響は電離層の下層部(60〜100km)だけでなく、約507kmの高層部でも電場の強い変動を引き起こしていました。
ウベルティーニ氏によると、こうした電離層の撹乱が起きるのは普通、地球から約1億5000万kmにある太陽フレアの影響がほとんどだという。
24億光年も離れた超新星爆発からのガンマ線バーストが、電離層の全域にわたって強い影響を及ぼした例は過去に存在しません。
それでも幸いなことに、ガンマ線バーストが電離層に穴を空けて、地上にダメージをもたらすことはありませんでした。
これはガンマ線バーストの発生地点が地球から非常に遠方であったためです。
そのためウベルティーニ氏いわく、GRB 221009Aと同じ規模のガンマ線バーストがもっと近くで起こっていたら、タダでは済まなかったという。
最悪の場合、地球に衝突したガンマ線バーストは電離層だけでなく、その下の成層圏にあるオゾン層(上空約10〜50km)までを破壊し、太陽からの危険な紫外線がダイレクトに地上に到達してしまうと推定されています。
またこれと同じプロセスは、実際に過去の地球で起こったいくつかの大量絶滅を説明できる可能性があるとも指摘されました。
ただこの仮説を確認するには、考古学調査を含めた更なる研究が必要となるでしょう。
今のところ、地球の近傍において、私たちの生命を脅かすほどの超新星爆発の存在は確認されていないといいます。
こちらはESAが作成した「超新星爆発でガンマ線バーストを放出した後にブラックホールが誕生する」ところを再現した映像です。
参考文献
Record Space Explosion Was So Powerful It Shook Earth’s Atmosphere
https://www.sciencealert.com/record-space-explosion-was-so-powerful-it-shook-earths-atmosphere
Blast from the past: gamma-ray burst strikes Earth from distant exploding star
https://www.esa.int/Science_Exploration/Space_Science/Integral/Blast_from_the_past_gamma-ray_burst_strikes_Earth_from_distant_exploding_star
NASA Missions Probe What May Be a 1-In-10,000-Year Gamma-ray Burst
https://svs.gsfc.nasa.gov/14317
元論文
Evidence of an upper ionospheric electric field perturbation correlated with a gamma ray burst
https://www.nature.com/articles/s41467-023-42551-5