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これまでの研究で、不安感受性の高い人は身体活動を避ける傾向にあることが示唆されていましたが、確かな関連性は明示されていませんでした。
そこで研究チームは「不安感受性」と「身体活動レベル」にどのような関連性があるのかを調べることにしました。
調査では、9つの主要な研究データベースから今回のテーマに関連する43の先行研究を集め、計1万303人の被験者データのメタ分析を行っています。
その結果、不安感受性の高さと身体活動レベルの間には、有意な”負の関係”があることが分かったのです。
簡単に言えば、不安感受性の高い人ほど日々の身体活動が少なく、不安感受性の低い人ほど身体活動が多くなる傾向にありました。
これは以前の研究で示唆されていた「不安感受性が高い人ほど身体活動を避ける」ことを証明する結果です。
さらにチームは、不安感受性をさまざまなタイプ別に分けて、より詳しく掘り下げてみました。
すると、個人レベル(例えば、私生活や仕事)での不安感受性が高い場合には、身体活動が有意に低下するものの、社会的状況(例えば、物価高や中東での戦争)への不安感受性が高い場合には、身体活動との有意な関連性は見られませんでした。
つまり、身体活動レベルの低下は、個々人の心配や不安に起因して生じるものと考えられます。
それに加えて、不安感受性と身体活動の関連性の強さは、身体活動の強度にも依存していることが判明しています。
メタ分析の結果、散歩のような強度の低い運動では、両者の相関性も小さくなっていました。
ところが、ラントレやスポーツのような強度の高い運動になると、不安感受性と身体活動の負の関係が最大化していたのです。
以上の結果を踏まえると、不安感受性の高い人は、健康メリットの大きな高強度の運動と縁遠くなることで、余計に心身の状態を悪化させるリスクが高くなると考えられます。
その一方で、過去の研究では、高強度の運動を自発的に行うことで不安レベルを低下させられる可能性があることが示されています。
運動をしないから不安感受性が高くなっているのか、不安感受性が高いから運動しなくなるのか、この点はまだ明確には言えないかもしれません。
ただ、高強度の運動ほど準備に時間がかかったり、怪我のリスクなどを考えやすくなる可能性もあるため、不安感受性の高い人は避けがちになるのかもしれません。
ボルダリングなどのスポーツや、重いウェイトトレーニングなどは、潜在的なリスクを想定しやすい人は、危なそうだからやめておこうと手が出ていないのではないでしょうか?
しかし、いずれにせよ運動が精神的な健康に良い働きをすることは数々の研究から示されています。
研究主任の一人であるクリス・デウルフ(Chris DeWolfe)氏は「日常的な身体活動レベルが低い人ほど、運動から得られる心身へのプラスの効果はより大きなものとなるでしょう」と指摘しました。
日常的に心配や不安を感じやすい人は、意識してランニングやスポーツを取り入れてみることで、心身の健康を大きく改善できるかもしれません。
チームは今後、なぜ不安感受性が高いと身体活動レベルが落ちてしまうのかという”因果関係”について明らかにしていく予定です。
参考文献
Individuals with higher anxiety sensitivity tend to be less physically active https://www.psypost.org/2023/10/individuals-with-higher-anxiety-sensitivity-tend-to-be-less-physically-active-214026元論文
Anxiety sensitivity and physical activity are inversely related: A meta-analytic review https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1755296623000467