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しかし現在のところ、「スマホ依存症」は公的に認められた病気ではなく、明確な定義が存在しません。
これはスマホ依存症に問題が無いという意味でなく、研究が十分に進んでいないためです。
そのため、スウィンバーン工科大学の研究者であるサキブ・ナワズ氏は、2023年9月に発表された論文の中で、何をもって「スマホ依存症」と呼ぶのか、分類や指標を再評価する必要があると述べています。
そして彼はインタビューの中でも、スマホへの依存が他の依存症と同じく、正式な「依存症」として認められるべきだと訴えています。
スマホへの依存は、それだけ私たちにとって有害であり、容易に重症化してしまうというのです。
実際、ナワズ氏によると、「経験豊かな多くの研究者が、物質関連障害(物質に関する依存・病的な行動パターン)や嗜癖(しへき:有害な結果を被っているにも関わらず、それをやめられない状態)と、スマホ依存症との顕著な類似点を指摘している」ようです。
そしてスマホ依存症の恐ろしさを改めて伝えているのは、ナワズ氏のような研究者だけではありません。
オーストラリアのアーティストであるアレックス・ウェイデルトン氏は、画像生成AIを用いた「What Could Have Been」と題するシリーズを公開しています。
そこでは歴史上の偉人たちがスマホを持っている場面が描かれています。
虚ろな目でスマホを眺める姿は現代の私たちそのものですが、歴史上の偉人たちに当てはめると、大きな教訓が得られます。
世界中の人々は、毎日4時間近くスマホの画面を見つめています。
もし、アルベルト・アインシュタインがスマホで画面をスクロールし続けることに1日4時間以上も費やしていたらなら、果たして相対性理論を発表することができたでしょうか。
もし、ナポレオン・ボナパルトがスマホを触り続けていたなら、ヨーロッパ大陸の大半を勢力下に置くことができたでしょうか。
世界地図をひたすら眺めたり、侵略ゲームに熱中したりするだけで、行動することをあきらめたかもしれません。
もし、クロード・モネがスマホ依存症だったなら、代表作の「印象・日の出」は生まれていなかったかもしれません。
それどころか、撮った写真をいろんなフィルターにかけることに忙しく、絵を描くこと自体やめていたかもしれません。
マザー・テレサも睡眠不足でそれほど多くの人々を助けられなかったでしょう。
これらのアートから分かるのは、生産性のないスマホの使用が今と将来を台無しにするということです。
では、スマホ依存症の定義がはっきりとしていない現代で、依存とその最悪の結果から、どのように身を守れるでしょうか。
研究者のナワズ氏は、スマホのメリットとデメリットを意識し、バランスをとることが大切だと指摘しています。
「単にスマホを使わない」のではなく、デメリットになりえる場面での使用をあらかじめ制限しておくべきなのです。
そしてもし「スマホをチェックできないとイライラしたり不安になったりする」など依存の傾向があるなら、次のような対策をとるよう勧めています。
結論としてナワズ氏は、「現在にもっと集中することで、ストレスの軽減、生産性の向上が得られ、社会的つながりが深まる」と述べています。
将来、私たちは、アインシュタインやモネのように、偉業を成し遂げるかもしれません。
大きな可能性に満ちているのです。
ただし、スマホ依存症でなければ、の話ですが。
参考文献
Dependent on your phone? It could be the gateway to addiction https://www.scimex.org/newsfeed/dependent-on-your-phone-it-could-be-the-gateway-to-addiction AI-generated portraits question the influence of historic figures in an era of smartphones https://www.designboom.com/art/ai-generated-portraits-historic-figures-smartphones-alex-wadelton-what-could-have-been-10-09-2023/元論文
Rethinking classifications and metrics for problematic smartphone use and dependence: Addressing the call for reassessment https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S245195882300060X