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アメリカにおける肥満の有病率は着実に増加しており、2018年には成人の42%近くに達しました。
そしてこれら肥満は、少なくとも13種類のがんのリスクを高めると言われています。
特に女性では肥満関連のがんの診断が、がん全体の55%を占めており、男性の値(24%)よりも高くなっています。
そのため女性の肥満に対処することは、彼女たちの命と健康を守ることに繋がります。
肥満を予防するためには日常的に軽度な内容でも運動することが重要です。しかしアメリカ人女性(25歳以上)の60%以上が、推奨レベルの運動を行えていないといいます。
ウォーキングなどは運動不足を解消する良い方法ですが、個々にアプローチして運動習慣を改善させるのは簡単ではありません。
そこで研究チームは、個々の人々ではなく、それらの人々が住む都市デザインに着目し、肥満に関連するがんへの影響を調査することにしました。
この研究には、1万4274人の女性を対象とした約24年間の追跡調査「ニューヨーク大学女性健康調査(NYUWHS)」が用いられました。
そして彼女たちが住む地域の「歩きやすさ」と肥満に関連するがん(閉経後の乳がん、卵巣がん、子宮体がん、多発性骨髄腫など)のリスクが分析されました。
その結果、歩きやすさレベルが上位25%の地域に住む女性は、下位25%の地域に住む女性に比べて、肥満関連のがんのリスクが26%も低いという結果が得られたのです。
また研究チームによると、貧困レベルが高いと、地域の歩きやすさと肥満やがんとの関連性も強くなるようです。
これらの結果から、歩きやすい地域に住んでいる女性は、気軽にウォーキングなどを行うことができ、それが肥満や肥満に関連するがんのリスクを低減させていると考えられます。
研究者のランドル氏は「歩きやすい都市をデザインすることで、そこに住む女性全体の運動量を増加させ、病気の予防と改善に繋がる」と述べています。
今回の研究はアメリカの女性を対象にしたものでしたが、「地域の歩きやすさと肥満」という観点で考えると、日本でも同様に参考にできる部分があるでしょう。
例えば誰しも、狭くて、複雑で、危険な道を歩きたいとは思いません。
テレビではときおり、「危険な通学路」という特集を見かけることがあります。
これは主に小学生の交通事故のリスクと関連して語られますが、歩道がなく狭くて自動車が近くを走る道路ばかりの地域は大人であっても歩きにくい地域と捉える事ができます。
そのような場所では、気軽に「さあ、ウォーキングやジョギングに出かけよう」という気持ちにはなりにくいでしょう。
私たちのほとんどは都市のデザインを変更できるほどの力は持っていませんが、自分で住む場所を選ぶことはできます。
もし引越しの機会があるなら、「ウォーキングシューズを履いて出かけたくなるような街」を選ぶことが健康のためにも良い選択になるかもしれません。
その選択によってあなたの身体は、よりスリムになり、がんリスクも減らせるようになるかもしれないのです。
参考文献
Women Living In More Walkable Neighborhoods Have Lower Rates of Obesity-Related Cancers https://www.publichealth.columbia.edu/news/women-living-more-walkable-neighborhoods-have-lower-rates-obesity-related-cancers元論文
Long-Term Exposure to Walkable Residential Neighborhoods and Risk of Obesity-Related Cancer in the New York University Women’s Health Study (NYUWHS) https://ehp.niehs.nih.gov/doi/full/10.1289/EHP11538