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また、2色覚は赤・青・緑のどれが識別できないかで次の3タイプに分けられます。
・赤を感じる視細胞がない「1型2色覚」
・緑を感じる視細胞がない「2型2色覚」
・青を感じる視細胞がない「3型2色覚」
1型2色覚は先天性色覚異常の約25%を占め、赤色が黒っぽく見えます。
2型2色覚は全体の約75%と最も多く、赤色に加えて緑色のものも黒や茶色っぽく見えます。
3型2色覚はほぼいませんが、青色が青緑っぽく、黄色がピンク色に、緑色が灰色っぽく見えたりします。
2色覚の人々が日常的に体験している具体例としては、
・熟れた赤いトマトと未熟な緑のトマトが区別できない
・信号の赤と黄色が分かりづらい
・充電完了ランプの色の変化が見えづらい
・カレンダーの祝日が色分けが識別できない
・緑の黒板に書かれた赤い文字が読めない
などがあるようです。
2色覚の見え方は、こちらのTOYO INKのページから疑似体験できます。
このように色覚異常についてはかなり詳細に分析されているので、3色覚の人でも2色覚の見え方を体験することは可能ですが、一方で、色覚の違いにより、日常的な色空間への視線の向け方や、そこから受ける主観的な色彩印象に変化があるのかは調べられていませんでした。
そこで研究チームは「絵画の鑑賞」をテーマに実験を行いました。
今回の実験では、2色覚と3色覚の異なる色覚を持つ参加者58人を対象に、色と明るさの空間配置がさまざまな24枚の絵画画像を30秒間見てもらいました。
また一般的な3色覚を持つ人の半数には、2色覚の見え方を模擬した絵画画像を鑑賞してもらっています。
そして全員に、23個の形容詞ペア(暖かい・冷たい、色彩豊かな・単調で地味…etc)を用いて各絵画に対する主観的な色彩印象を評価してもらいました。
まず、鑑賞時の視線の向け方を計測した結果、2色覚の人々は比較的バラつきがあったのに対し、3色覚の人々はお互いに視線の向け方が似ていることが示されています。
これは3色覚の人々において、絵画の色情報が注意を誘導する共通の手がかりとして働いていることを示唆するものです。
次に、形容詞ペアの評価を分析したところ、3色覚の人々の色彩印象は2色覚を模擬した画像を見たときに乏しくなると評価されました。
これは3色覚を持つ人にとっては、2色覚の見え方に色の単調さや地味さが感じられることを示唆します。
ところが全体的な評価を比較してみると、2色覚の人と3色覚の人の間に、主観的な色彩印象の大きな違いは見られなかったのです。
研究者はこれについて「2色覚の人でも、3色覚の人でも、自身に特有の色空間を長期間経験することで独自の色彩感覚が形成され、色彩を含む固有の印象が生まれると考えられる」と指摘しました。
つまり、たとえ2色覚であっても、独自の色空間でもって十分に豊かな絵画体験を得ていると言えるでしょう。
以上の結果からチームは、主観的な色彩印象の形成には、遺伝子で決められた色覚のみに影響されず、脳における様々な情報処理が関わっていると推測します。
今後のステップとしては、どんな情報が個々の色彩印象の形成に寄与しているかを解明することが望まれます。
参考文献
色覚の違いが絵画の見方や印象に与える影響の実証 https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/973 色覚の異常(三和化学研究所) https://www.skk-net.com/health/me/c01_13.html元論文
Influence of colour vision on attention to, and impression of, complex aesthetic images https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2023.1332