2023年9月8日夜、北アフリカのモロッコ中部でマグニチュード6.8の強い地震が発生しました。

この地震は大きな被害を引き起こしており、これまでに少なくとも2900人以上の死亡が確認され、現在も懸命な救助活動が続いています。

モロッコに壊滅的な被害を与えたこの地震ですが、発生直前、不気味に空を照らす謎の光が複数目撃されており、撮影された動画がX(旧Twitter)にあげられています。

地震の直前や地震発生時に空が光るという現象は世界中で報告されており、過去には日本でも、阪神淡路大震災や東日本大震災などの大きな地震の際に空が光ったとの目撃情報があることから、大地震と発光現象は何か関連があるようです。

一体、地震の際に起こる発光現象はどのようなメカニズムで発生するのでしょうか。

目次

  • 地震の3分前から発生している発光現象
  • 大きな地震の時に目撃される「地震発光」
  • 地震発光は作り話ではない

地震の3分前から発生している発光現象

まず、さっそく今回のモロッコでの地震の際に発生した発光現象を見てみましょう。

11秒くらいに中央で1回、20秒くらいに画面左端で1回、そして22秒くらいに中央で1回と、計3回に渡り発光現象が起きていることが確認できます。特定の場所だけが発光するわけではないようです。

地震はモロッコ時間で23時11分に発生したので、この監視カメラの動画は地震の約3分前のものと思われます。

また、地震の2分前近くにも別の場所で撮影されたと思われる動画がTikTokもにあげられていました。

この動画からも複数回、発光現象が起きていることが確認できます。

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これらの動画から、少なくとも地震の3分前から2分程度は発光現象が続いていたと思われます。

雷とも違うこれらの発光現象は一体何なのでしょうか。

大きな地震の時に目撃される「地震発光」

地震の直前や地震発生時に起こるこの発光現象は「地震発光」と呼ばれ、古くは古代ギリシャの頃からその存在が報告されています。

ニューヨーク・タイムズ紙によれば、報告されているものは、1秒ほどの明るい閃光から1分ほど光り続ける火の玉のようなものまでさまざまなようです。

SETI研究所の地球物理学者フリードマン・フロイント氏ら研究チームは、この地震発光の報告を調査し、2014年に『Prevalence of Earthquake Lights Associated with Rift Environments(地溝環境に関連した地震発光の割合)』という論文を発表しています。

研究によると、地震発光の約80%がマグニチュード5.0を超す地震で観測されており、そのほとんどが、地震の直前、もしくは揺れている最中に、震源から600キロ以内の距離で目撃されています。

大きな地震は、地球の地殻プレートの境界やその周囲で発生することが多いですが、フロイント氏らの研究では、地震発光が起きている地震の多くは、地殻プレートの境界ではなく内部で起こっていることが明らかとなりました。

また、この地震発光は、地殻プレートが裂けて二つの高い地域の間にできた細く長い低い範囲、いわゆる「地溝帯」ができた場所の近くでよく見られていたのです。

しかし、どのようなメカニズムで地震発光は発生しているのでしょうか。

Credit:canva

地震発光のメカニズムとは

地震発光という現象について、フロイント氏は興味深い仮説を提案しています。

岩石の中にある不純物は、大きな地震が発生する直前や、発生した瞬間、強い圧力がかかることで瞬時に分解され、電気を発生する可能性があります。

普段、岩石は電気を通さない絶縁体ですが、圧力がかかると、電気を通す半導体の性質を持ちます。

フロイント氏は、「大量の岩石が圧力を受けることで内部の鉱物粒子の動きを引き起こす」と説明しています。

そして、発生した電荷が岩石を流れて発光するのだと言います。驚くべきことに、この電荷の移動速度は、秒速で約200メートルにもなることがあるそうです。

他にも「岩盤が壊れることで静電気が発生する」という説や、初期の揺れが送電線を揺らし、アーク放電と呼ばれる現象を発生させた可能性も指摘されています。

しかし、地震発光の正確な原因について、専門家たちの間で明確な答えはでていません。

地震発光は非常に稀な現象であり、また非常に規模の大きい現象でもあるため、研究者が狙って詳細な状況を観測したり、再現することが困難なためです。

この現象を解明する研究は現在も続けられています。

地震発光は作り話ではない

かつて、地震発光は別の光の見間違いだと思われていたり、作り話だと思われていたことが多くありました。

しかし、防犯カメラやスマートフォンの普及により、地震発光は実際に起こるという説を裏付けるような映像が増え始めています。

2016年11月14日(日本時間13日)、ニュージーランドで発生したマグニチュード7.8の強い地震の際、青白く光る空が撮影されています。

2007年、ペルーで発生したピスコ地震の際も、防犯カメラ映像に発光現象がとらえられています。

また、まだ記憶に新しい今年2月に発生したトルコの地震でも、同じように青白く光る地震発光がとらえられていたようです。

これらの地震発光と思われる光はどれも白く、または青白く光っているのが特徴で、雷とは違う独特の光り方をしています。

まだメカニズムが解明されたわけではなく、謎が多い現象ですが、今後も動画などのデータが増えることでさらに研究が進むでしょう。

もしかすると、地震発生の予測などにも役立つかもしれません。

地震大国の日本に住む身としては非常に気になるところですね。

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参考文献

Mysterious Lights Flashed in The Sky Before Morocco’s Devastating Earthquake https://www.sciencealert.com/mysterious-lights-flashed-in-the-sky-before-moroccos-devastating-earthquake

元論文

Prevalence of Earthquake Lights Associated with Rift Environments https://pubs.geoscienceworld.org/ssa/srl/article-abstract/85/1/159/349010/Prevalence-of-Earthquake-Lights-Associated-with?redirectedFrom=fulltext
情報提供元: ナゾロジー
記事名:「 モロッコ地震の直前、空に謎の発光現象!災害の予兆「地震発光」とは?