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自由の女神が青緑色に変色していった過程には、もちろん科学的な理由があります。
自由の女神がニューヨークにやってきた当初、表面は光沢のある銅色でしたが、徐々に暗い茶色へと変色していき、その後、今私たちが見ている青緑色へと変わっていきました。
この変色の主な理由は銅と空気の酸化反応です。
まず、銅は酸素と反応して、赤みを帯びた「キュープライト(cuprite)」という化合物を形成します。
その後、さらに酸素との反応が進むことで黒色の「テノライト(tenorite)」が形成されます。
これらの反応により、自由の女神は、まず暗い茶色へと色を変えていきました。
そして、ここから青緑色へ変化していくには「硫黄」が関係してきます。
火山噴火のような自然現象では大気中に硫黄の成分が放出されます。さらに、人間も船や車、飛行機、工場などから多くの硫黄を排出しています。
この硫黄と水が反応することで「硫酸」が生まれます。大気中の硫酸イオン濃度は大気汚染の指標の1つでもあります。
硫酸が銅と反応すると「ブロシャンタイト(brochantite)」という青緑色の化合物が形成され、さらに多くの硫酸が反応すると「アントレライト(antlerite)」という鮮やかな緑色の化合物が形成されます。
そして、海の近くに立っている自由の女神には、一部に海のしぶきが当たり、海水がブロシャンタイトと反応することで、「アタカマイト(atacamite)」と呼ばれる別の緑色の化合物も形成されました。
自由の女神像は、この3種類の化合物によって青緑色に変わったのです。
なお、このように銅や銅合金が、酸素や水分、塩分などと反応することで金属上に生成される青緑色の化合物を、日本語ではまとめて「緑青(ろくしょう)」と呼びます。
これはあくまでイメージですが、時間とともに自由の女神の色が変っていくアニメーションがありました。
もしかすると自由の女神は25年から30年ほどで今の色に変化したのかもしれません。
hat tip @JLRuby55https://t.co/UihcLpYtKnpic.twitter.com/6vASZqqnDd
— Samuel Hammond
(@hamandcheese) September 6, 2023
自由の女神と同じように、光沢のある銅色から、青緑色に変化してしまった銅像はたくさん存在しています。
日本人に馴染み深い銅像だと、東京・上野恩賜公園に立っている西郷隆盛像や、鎌倉の大仏などが挙げられます。
また、銅像以外でも、名古屋城の天守の屋根には軽量で耐久性のある銅瓦が使われているため、鮮やかな青緑色に変化していることは有名です。
This is unironically an awesome idea. https://t.co/1We0E6yMMTpic.twitter.com/PYsKJC4Xqw
—Samuel Hammond
(@hamandcheese) September 5, 2023
アメリカでにわかに話題になっているこのポスト画像の自由の女神は、後から着色を施したものだと思われるので、1886年の自由の女神がこれだけ光沢を持っていたかはわかりません。
しかし、完成当初の光沢のある自由の女神を見たいという声は以前からあるようで、実は自由の女神の色を戻そうというアイデアは、過去にも提案されたことがありました。
過去の提案の際には、多くの人々が現在の青緑色の自由の女神に愛着を持っているため、大きな反対の声が上がったのです。
やはり、完成時の姿ではなくても、人は見慣れた姿が一番安心できるのかもしれません。
もし本当に元の色に戻ることがあったとしても、時間とともに同じ変色のプロセスが始まり、自由の女神は今の姿を取り戻すでしょう。
参考文献
People Want To Clean The Statue Of Liberty To Reveal Its True Color https://www.iflscience.com/people-want-to-clean-the-statue-of-liberty-to-reveal-its-true-color-70585