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モッタ氏ら研究チームは、この点を明らかにするため、アメリカに住むイヌの飼い主2200人を対象に、イヌ用ワクチンを躊躇しているかオンライン調査しました。
今回の調査は2023年3月30日から4月10日まで実施され、イヌのワクチン接種に関する懸念・原因・医療政策への影響を正式に定量化した初めての研究となりました。
その結果、イヌの飼い主の53%がイヌ用ワクチンの安全性・有効性・必要性について何らかの懸念を抱いていると分かりました。
より詳細な報告によると、イヌ用ワクチンを「安全でない」と考えている飼い主は40%近くおり、「効果がない」と考える人は20%以上、「医学的に不要」だと感じる人は30%でした。
さらに37%の飼い主は、科学的根拠がないにも関わらず、「イヌ用ワクチンがイヌの認知機能に悪影響を与え、自閉症の発症に繋がる」と懸念しているようです。
そして注目すべきことに、ヒト用ワクチンに対して否定的な態度を取っている人は、ペット用ワクチンに対しても否定的な考えを抱く可能性が高いというのです。
こうした事実はコロナ禍でヒト用ワクチンに対する見方が悪化した人は、イヌ用ワクチンに対する見方も悪化し、接種努力を怠る恐れがあることを示唆しています。
これは単に飼い主と愛犬だけの問題ではありません。狂犬病ワクチンについて飼い主が接種義務を怠り始めると社会的に大きな問題となる可能性があります。
イヌ用ワクチンに対する懐疑的な見方は、狂犬病のワクチン接種にも影響を与える可能性が高いと言えます。
狂犬病ウイルスは、人間を含むすべての哺乳類に感染し、脳で繁殖しやすいのが特徴です。
そのため感染すると知覚異常や痙攣、麻痺、興奮などを生じさせ、最終的には脳の中枢神経を破壊してしまいます。
狂犬病は、発症後の致死率が99%であり、毎年5万9000人を殺している人類の身近ある「最悪のウイルス」の1つです。
ただし、人間への感染経路の99%はイヌからの咬み傷などであり、イヌの予防接種や咬まれた後のワクチン接種で発症を未然に防ぐことができます。
この恐ろしいウイルスの存在が、人類にとって致命的ではない理由は、ワクチンによる対策が成功しているからと言えるでしょう。
また研究チームは、「どの薬、治療法、ワクチンにも副作用のリスクは常にあるが、狂犬病ワクチンのリスクは非常に低い」と述べています。
世帯の45%が犬を飼っているアメリカでは、多くの州で狂犬病の予防接種が義務付けられています。
それでも、今回の研究結果が示すように、ワクチン全般に対する懐疑的な見方によって、狂犬病ワクチンの接種義務を怠る人が増加する恐れがあります。
もともと狂犬病ワクチンが入手しにくい発展途上国ではなおさらでしょう。
日本に住む私たちとしても、日本や海外で「ワクチン嫌いな飼い主のペット」と接する機会があるため、他人事ではありません。
マット氏が指摘するように、「今回の調査で示された波及効果は、ヒト用ワクチンの安全性と有効性に対する信頼を回復することの重要性を浮き彫り」にしました。
飼い主ひとりひとりが科学的な根拠に基づいて、愛犬への予防接種を行うことは非常に大切です。
加えて、ワクチンそのものに対する信頼を回復することも、アフターコロナの世界で急務だと言えるでしょう。
参考文献
Nearly Half of Dog Owners Are Hesitant to Vaccinate Their Pets https://www.bu.edu/sph/news/articles/2023/nearly-half-of-dog-owners-are-hesitant-to-vaccinate-their-pets/ Majority of US dog owners now skeptical of vaccines, including for rabies: study https://thehill.com/policy/healthcare/4177294-majority-of-us-dog-owners-now-skeptical-of-vaccines-including-for-rabies-study/元論文
Sick as a dog? The prevalence, politicization, and health policy consequences of canine vaccine hesitancy (CVH) https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0264410X23010150?