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PFAS(ペルフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル化合物)は、アルキル鎖に複数のフッ素原子が結合した有機フッ素化合物の総称で、私たちの生活の中では、アウトドア用の衣類からテフロン加工の鍋まで、防水、耐熱、そして汚れに強いさまざまな日用品に用いられています。
しかし、この物質は人間や野生生物、さらには環境に対して潜在的なリスクを持っているのです。
PFASは非常に分解しにくく、数千年にも渡って残留する可能性があることから「永遠の化学物質」とも呼ばれています。
PFASはワクチンの効果への影響、新生児の体重低下、甲状腺の疾患、コレステロールの増加、肝機能障害、腎臓や精巣のがんなど、さまざまな健康問題との関連が指摘されています。
最近の別の研究で、米国で使用されていた植物由来のストローからPFASが検出されたことで、アントワープ大学の環境科学者、ティモ・グロフェン博士は、ベルギーで販売されているストローにも同じことが当てはまるのではないかと考えました。
そこで研究チームは、紙、竹、ガラス、ステンレス、プラスチックの5種類の素材から作られた39種類のストローを購入し、2度に渡りPFASの検査を行いました。
その結果、39種類のストローのうち、27種類のストローで、合計18種類ものPFASが検出されたのです。
中でも、紙製ストローはPFASを含む可能性が最も高く、検査した20種類のうち18種類(90%)から検出されました。次いで竹製ストローの5種類のうち4種類(80%)、プラスチック製ストロー4種類のうち3種類(75%)、ガラス製ストロー5種類のうち2種類(40%)からもPFASが検出されたのです。5種類のステンレス製ストローからはPFASは検出されませんでした。
PFASと一言に言ってもそこにはさまざまな種類が含まれます。
最も多く検出されたのはペルフルオロオクタン酸(PFOA)と呼ばれるもので、2020年から世界的に規制されています。
また、水溶性が高いトリフルオロ酢酸(TFA)、トリフルオロメタンスルホン酸(TFMS)も検出されており、これらの物質はストローから飲み物に溶出する可能性が指摘されています。
グロフェン博士は、「紙や竹のような植物由来の素材から作られたストローは、プラスチック製のものよりも持続可能で環境に優しいと言われています。しかし、これらのストローにPFASが含まれているということは、必ずしもそうではないということです」と語っています。
今回検出されたPFASの濃度は低く、多くの人がストローをたまにしか使用しないことを考えると、人体への健康に対するリスクは心配するほどではないのかもしれません。
しかし、PFASは長期間体内に残留する可能性があり、時間の経過とともに体内の濃度も高くなる可能性があります。
PFASがメーカーによって防水目的でストローに添加されたのか、それとも汚染の結果なのかは現時点では不明ですが、汚染されたと考えた場合、その潜在的な汚染源は、植物由来の材料が栽培された土壌や、製造プロセスで使用される水などが考えられます。
しかし、研究者らは、「ほぼすべての種類の紙ストローにPFASが含まれているということは、撥水コーティングとして使用されていた可能性が高い」と述べています。
現在、多くの国ではストローを含む使い捨てプラスチック製品の販売が禁止され、植物由来のものが代替品として人気を集めています。
しかし、本当に環境や私たちの健康に優しい選択をするためには、単にプラスチックを使わないという選択では不十分かもしれません。
今後の技術や研究が、真に持続可能で安全な代替品を提供することを期待しましょう。
参考文献
Paper drinking straws may be harmful and may not be better for the environment than plastic versions, researchers warn https://phys.org/news/2023-08-paper-straws-environment-plastic-versions.html元論文
Assessment of poly- and perfluoroalkyl substances (PFAS) in commercially available drinking straws using targeted and suspect screening approaches https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/19440049.2023.2240908