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そこで研究チームは大量のコーヒーかすを再利用する方法として、建設用コンクリートの材料に使う案を思いつきました。
一般的なコンクリートは水・セメント・砂・石を混ぜて作られますが、以前から「使用済みコーヒーかすは粒子の直径から砂の代わりとして使える」ことが提案されているのです。
コンクリートは現代社会の建築に欠かせない資材となっていますが、そのために大量の天然砂が河床や堤防から採取され続けています。
推定で年間500億トンの砂が世界中の建設プロジェクトに使用されているという。
資源には限りがあるため、このままでは持続可能な砂の供給は困難であり、また砂を大量に採取する行為は環境にも何らかの二次被害を出す恐れもあります。
それゆえ、使用済みコーヒーかすを砂の代替材料にすることは多くのメリットがあるのです。
しかしコーヒーかすは有機物であるので、そのまま混ぜ込んでも他の材料と結合せず、砂の代わりにはなりません。
まずは抽出後のコーヒーかすを乾燥させて加熱し、「バイオ炭(Biochar)」に変えることが必要です。
バイオ炭とは、生物由来の有機物(バイオマス)を焼いて炭化させたものを指します。
他の原料としては木や竹、もみ殻、家畜の排せつ物などがあり、それらをバイオ炭にすることでメタンや二酸化炭素を封じ込め、温室効果ガスの排出量を削減するメリットもあるのです。
チームは今回、使用済みコーヒーかすをバイオ炭にするところから実験を始め、どれくらいコンクリートの強度アップに貢献するかを検証しました。
チームはまず、豪メルボルン周辺にあるカフェから使用済みコーヒーかす(以下、SCGと表記)を回収し、実験室で完全乾燥(60°Cのオーブンで48時間)させて水分を取り除きました。
その後、SCGを酸素のない状態で350°Cまたは500°Cの2通りの温度で加熱処理し、バイオ炭を生成します。
次に「未加工のSCG」「350°Cで加熱したSCG」「500°Cで加熱したSCG」を細骨材(砂)の代替として、ポルトランドセメント(最も典型的なセメント)に配合し、コンクリートを作りました。
このとき、3種のSCGは5%、10%、15%、20%の体積割合で砂と置き換えられています。
そして完成したコンクリートの圧縮強度(固体材料が壊れずに耐えられる圧力の限界)をテスト。
その結果、未加工のSCGと500°Cで加熱したSCGは置換レベルを増やすごとに、コンクリートの強度を弱めることが判明しました。
未加工のSCGは有機化合物が溶出してセメントの反応を阻害したこと、500°Cで加熱したSCGはバイオ炭が多孔質になりすぎたことが原因と見られています。
一方で、350°Cで加熱したSCGは5〜15%と置換レベルを増やすごとにコンクリートの強度が高まることが判明しました。
特に砂との置換レベルが15%のときに効果が最大化し、圧縮強度は29.3%も増加しています。
しかしそれ以上の置換レベルになると、強度が徐々に下がっていったとのことです。
試験はまだ初期段階だといいますが、チームは「コーヒーがどこにでもあることを踏まえると、世界中の建設材料にSCGが利用できる可能性がある」と述べました。
この技術が実用化されれば、SCGの埋め立てや天然砂の採集量を削減するとともに、環境保護や温暖化を緩和する役に立つと期待されます。
チームは次なるステップとして、SCGバイオ炭を工業レベルで生産するラインを整えながら、様々な業界と協力して、世界中での実用化を目指す予定です。
コーヒーかすは一般家庭からも得られるので、もしかしたら自宅をまわる回収屋さんも現れるかもしれませんね。
参考文献
Coffee offers performance boost for concrete https://www.rmit.edu.au/news/all-news/2023/aug/coffee-concrete Waste coffee grounds make concrete 30% stronger https://newatlas.com/materials/waste-coffee-grounds-make-concrete-30-percent-stronger/元論文
Transforming spent coffee grounds into a valuable resource for the enhancement of concrete strength https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0959652623023636