連日の猛暑で疲れが取れず、ウツウツとした気分で毎日を過ごしてはいませんか? 

入院するほどではないけれど、とにかくいつもカラダがツライ…てな感じに苦しんでいるのは、あなただけではありません!

慢性的な暑さは熱中症のみならず、様々な健康問題を引き起こす可能性があります。長く続く厳しい暑さは、体のみならず精神的な健康にも影響を及ぼします

本記事では、猛暑が身体と心に及ぼす影響と、暑さに上手に付き合う方法について解説します。

目次

  • 身体への影響:長く続く暑さが私たちの内臓を攻撃する
  • 心への影響:慢性的な暑さが「夏季うつ」を招く
  • 暑さへの適応:「暑熱順化」で暑さに身体を慣れさせる

身体への影響:長く続く暑さが私たちの内臓を攻撃する

慢性的な暑さが健康にどのような影響をもたらすか理解するために、まず、身体が暑さに対してどのような反応を示すかを理解していきましょう。

体温調節機能は、主に循環器系と腎臓に依存しています。暑さが続くことで、これらのシステムへの負担が増し、場合によってはその限界を超えてしまうこともあるのです。

暑さは心臓を「過労死」させることもできる

Credit: Canva

体が暑さを感じ取ると、体温調節メカニズムが働きます。皮膚の血管が拡張して、血液が体の中心から表面へ移動し、エネルギーが皮膚表面に分散されます。

血液が皮膚表面に達すると、その熱を冷たい空気や物体に逃がします。これにより体温が下がり、さらに汗が蒸発することで、この冷却効果は高まります。

しかし、このプロセスは血圧の低下を引き起こし、心臓にさらに血液を循環させるよう促します。心臓血管系に大きな負担となるのです。

猛暑による死亡の多くは熱中症よりも、心臓がこの負荷に耐えきれずに問題が起きるためだという報告もあります。最近発表された研究によれば、極端な気温と息苦しいほどの大気汚染にさらされると、心臓発作で死亡するリスクが2倍になるそうです。

暑さと脱水は慢性腎臓病のリスクを増加させる

次に、暑さと脱水が腎臓にどのように影響するのかをみていきます。

暑い中での体温調節には、汗の蒸発が重要な役割を果たすことは、先ほど説明したとおりです。

皮膚表面から汗を蒸発させることで、体を冷やすのですが、湿度が高い場合はこれがうまくいきません

空気中にすでに多くの水分が存在しているため、新たな水分の蒸発に対する抵抗があり、汗がうまく蒸発しないのです。

その場合、体温が十分に下がらないため、体はさらに多くの汗を生成します。しかし、その汗もまた蒸発しないため、結果として体から失われる水分が増え、脱水状態になります

脱水が進行すると、血液の粘度が増して流れが悪くなるため、老廃物等を取り除く役割が十分に果たされません。すると体中に老廃物や水分がたまりやすくなり、長期的な腎臓の損傷や慢性腎臓病を引き起こす可能性が高くなります

調査によれば、熱ストレス下で働いていた21,000人以上のうち15%が腎臓病や傷害を経験しており、中央アメリカ、スリランカ、ネパールなどの暑い地域で働く労働者は、比較的若い年齢で慢性腎臓病を発症するそうです。

心への影響:慢性的な暑さが「夏季うつ」を招く

持続的な暑さは、脳や精神の健康にも悪影響を及ぼすとされています。

米国成人の暑さとメンタルヘルス関連の救急外来受診との関連を調べた研究によれば、気温が高い日には、薬物使用障害、気分障害、不安障害、ストレス障害などのメンタルヘルス疾患で救急外来を受診する人が多いことがわかりました。

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暑さがどのようにしてメンタルヘルスに影響しているのか、そのメカニズムはまだはっきりと解明されていません。

しかし現在のところ、ホルモンや神経系の乱れと、睡眠の質の低下が有力な原因と考えられています。

ホルモンバランスや神経系が乱れまくる

気温が上がると、体はストレス反応を示すことがあります。ストレスホルモンとして知られるコルチゾールの分泌が増えると、人々はイライラしたり、不機嫌になりがちです。

副交感神経系は、体をリラックスさせたり、落ち着かせたりする役割を果たします。しかし、高温状態ではこの神経系がうまく機能しなくなるため、ストレスに対する耐性が低下します。

その結果、ストレスへの感受性が高まり、一般的なストレス反応が強くなる可能性があるのです。

猛暑は脳内のセロトニン濃度に大きな影響を与え、ストレスの増加、疲労、幸福感の低下など、感情や行動の変化をもたらす可能性があります。研究によればメンタルヘルスの持病がある人は、暑さによる影響を特に受けやすいそうです。

睡眠の質が低下すると脳の機能が混乱する

暑い夜は、睡眠の質も低下させ、生物学や健康のあらゆる側面に影響を及ぼすことが知られています。

慢性的な睡眠不足は、日中の眠気や意欲低下・記憶力減退など精神機能の低下を引き起こすだけではなく、体内のホルモン分泌や自律神経機能にも大きな影響を及ぼすことが知られています。

2022年にコペンハーゲン大学らがまとめた研究によれば、私たちは温暖化によって毎年平均44時間の睡眠時間をすでに失っており、今後数年でさらに多くの睡眠時間を失う可能性があると報告されています。

今後も暑い夏は続く可能性が高いことが予想されています。こうした中、私たちは何ができるのでしょうか?

暑さへの適応:「暑熱順化」で暑さに身体を慣れさせる

適切な水分補給は非常に大切です。無理をせず、適切にエアコンを使用することも、もちろん大事です。

しかし、エアコンの効いた環境で24時間365日生活するのは、現実的な解決方法ではありません。これからの夏も猛暑が続くと予想されている以上、わたしたちはある程度、暑い気候に慣れていかなければなりません

私たちの暑さへの耐性は固定されたものではありません。研究によれば7日〜10日程度の「暑熱順化」と呼ばれるプロセスで、体を暑さに慣れさせることができます

暑熱順化は、身体が生理学的に暑熱環境に適応できるようにすることです。暑い環境での運動耐性が向上し、熱による健康被害のリスクが減少します。

Credit: 鶴屋蛙芽 &ナゾロジー編集部

暑熱順化では、血漿量の増加による体温上昇の抑制や、発汗が早くなること、発汗量の増加などが起こります

暑熱順化により発汗量と発汗速度が高まると、長時間の活動でも体内の熱の貯蔵が最小限に抑えられ、体の冷却速度が高くなります。

暑熱順化は通常、暑くなる前の季節から時間をかけて慣れていくものです。すでに暑くなっているなら、早朝や日没後の暑さがやわらいだ時間に屋外を散歩するなど、短時間でも自然な気温の中で過ごすところからはじめましょう

ただし「猛暑は人を死に至らしめる危険なもの」であることは、常に心に留めておきましょう。そのうえで、少しでも暑さを楽しめるように体を慣らすようにするのです。

無理のない範囲で体を動かすことは、身体や心の健康に良い影響をもたらしますよ。

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参考文献

Scorching Stress: The Hidden Mental Toll of Summer Heatwaves –Neuroscience News https://neurosciencenews.com/heatwaves-mental-health-23694/

元論文

Association Between Ambient Heat and Risk of Emergency Department Visits for Mental Health Among US Adults, 2010 to 2019 | Psychiatry and Behavioral Health | JAMA Psychiatry | JAMA Network https://jamanetwork.com/journals/jamapsychiatry/fullarticle/2789481
情報提供元: ナゾロジー
記事名:「 熱中症だけじゃない!健康に及ぼす猛暑の悪影響と対処法