- 週間ランキング
そこで研究チームは今回、既存の科学文献を検索したり、土壌で確認されている種に関するデータセットを再評価して、新たに土壌の生物多様性を推定することにしました。
ここでは、ある生物種が土壌の中および表面に生息する場合を「土壌暮らし」と定義し、その他の生息地として、海洋、淡水、海底、空中、建築物、人間などの宿主生物が含まれています。
アンソニー氏いわく、ここまで厳密に生物多様性と生息地の関係を調べたのは初めてとのことです。
そして文献とデータ分析の結果、地球上の全生物の3分の2に当たる約59%が土壌暮らしであると推定されました。
土壌暮らしの割合が高かった生物種は、高い順にヒメミミズ科が98.6%、菌類が90%、植物が85.5%となっています。
低い方のグループでは、カタツムリやナメクジを代表とする軟体動物で20%、モグラを代表とする哺乳類で3%でした。
こちらのグラフは各グループごとの土壌暮らしをしている種の割合(オレンジ)を示したものです。
その一方で、世界各地の土壌の研究がかなり不十分であるため、実際の数値はこれより低い可能性も高い可能性もあるといいます。
(科学者たちは地球上のすべての土壌を実地で調べ尽くしているわけではありません)
アンソニー氏は、推定値には最大で15%の誤差があると考えられ、それに従うと土壌生物の割合は低くて44%、高くて74%になると説明しました。
当然ながら、見つかっていない種はデータに含まれないので、その調査次第で生息地ごとの割合も変わってくるでしょう。
特に深海の世界は大部分が謎に満ちており、いまだ人類の知らない生物が山ほど潜んでいると言われています。
しかしそれでも本研究の成果は、土壌の生物多様性が予想以上に高く、土壌環境を保護する重要性をあらためて浮き彫りにするものです。
次項では土中生物の具体例として今回の論文に掲載されている写真を紹介しています。虫なども含まれるので苦手な方は注意してください。
アンソニー氏は「今回の私たちの努力は、土壌における地球規模の生物多様性を初めて現実的に推定したものであり、気候変動や環境破壊の危機に直面する中で、土壌を保護するための重要な指標となる」と述べています。
土壌は地球表面の最上層を覆っており、鉱物や有機物、水、ガスなどの混合物で構成されています。
地球上の食糧の95%は土壌で採取・栽培されており、私たちが生きていく上で、健康で肥沃な土壌は絶対に欠かせません。
にも関わらず、世界中の土壌は気候変動や環境汚染、森林破壊など、さまざまな圧力を受けており、着実に劣化や損失が進んでいます。
土壌の劣化はそこに住む生物多様性の喪失にもつながり、土の中の生命がいなくなることは、土が不健康になることを意味します。
例えば、ミミズや菌類は土の中の栄養を循環させ、肥沃な土壌や植物を育てるのに不可欠の存在です。
土壌の生物多様性を守ることは、そのまま地球の豊かさを守り、地上に暮らす人類や動物たちの暮らしを支えることになるでしょう。
参考文献
Two thirds of the world’s biodiversity lives in the soil https://www.wsl.ch/en/news/2023/08/two-thirds-of-the-worlds-biodiversity-lives-in-the-soil.html More than half of Earth’s species live in the soil, study finds https://www.theguardian.com/environment/2023/aug/07/more-than-half-of-earths-species-live-in-the-soil-study-finds-aoe元論文
Enumerating soil biodiversity https://www.pnas.org/doi/abs/10.1073/pnas.2304663120