簡単な名前の人は、難しい名前の人よりもより親しみやすく、信頼でき、危険性が少ない印象を抱かれるようです。

カナダ・ヴィクトリア大学(UVic)のエリン・ニューマン氏(Eryn Newman)らの研究チームは、名前の発音のしやすさによって発言の信憑性や人物の親しみやすさなどの印象が変化することが報告しています。

本来、発言の信憑性はエビデンスの有無などの要素に基づいて判断すべきです。

しかし研究チームは単に名前の発音のしやすさによって真実が歪む可能性があると警鐘を鳴らしています。

この研究の詳細は、学術誌「PLOS ONE」にて2014年2月24日に掲載されました。

目次

  • 簡単な名前 vs 難しい名前
  • 印象と発言の信憑性は名前の発言のしやすさに左右される

簡単な名前 vs 難しい名前

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簡単に理解できる、あるいは読むことができる流暢性の高い情報に対して私たちは好意的な評価を下します。

たとえば、過去に見たことのある人物の発言をより説得力があると感じたり、事前に聴いていた情報と近い動物を用いたラベルのワインをより好む傾向があります。

しかし流暢性が高い主張が信憑性が高いと判断されるのかどうかについては不明です。

ヴィクトリア大学のエリン氏らの研究チームは、簡単な名前と難しい名前の心理的な印象、発言の信憑性の関係性を検討しています。

研究チームは、大学生118名を対象に、発音が簡単な名前と難しい名前に対し、印象評価とその人物が述べた体での雑学に関する発言の信憑性を評価してもらいました。

実験で用いる名前の選定には、世界18カ国の新聞とWebsiteを調べ、架空の発音が簡単な名前と難しい名前を作成しました。

具体的な例として、東アジアの発音が簡単な名前には「(チェン・メイナ)Chen Meina」、発音が難しい名前には「(ホ・ヘソク)Hur Hye-seog」がありました。

今回の実験では日本の名前は用いられてませんが、日本名だったら簡単な名前だと「佐藤」、難しい名前だと「安居院(あぐい)」あたりが良い例として挙げられるでしょう。

さて名前の発音のしやすさによって、人物の印象や発言の信憑性に違いはあったのでしょうか。

簡単な名前の人は親しみ深く、危険性が少なく、信頼性が高いと判断される

実験の結果、名前の発音のしやすさによって人物の印象とその発言の信憑性に違いが見られました。

簡単な名前の人物は難しい名前の人物と比較して、より親しみやすく、危険性が少なく、信頼性が高いと評価されました。

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また発言の信憑性についても、難しい名前の人物の発言と比べて、簡単な名前の人物の発言は信憑性が高いと判断されることが確認されました。

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これらの結果は、人物の印象や発言の信憑性の判断に名前の発音のしやすさが影響を与え、簡単な名前の人物の印象は良く、またその発言も真実であると考えられやすい傾向が存在することを示しています。

研究チームは「私たち人間にとって、新しい情報と比較して、馴染みのある情報(ここでは自分の知識・経験内で読むことができる簡単な名前)ほど処理が簡単であるため、馴染みのある情報のほうがリスクが低く、危険ではないと自動的に判断する」と述べています。

印象と発言の信憑性は名前の発言のしやすさに左右される

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今回の研究は印象と発言の信憑性は名前の発音のしやすさに左右されることが示されました。

過去の研究では、簡単に処理できる刺激をポジティブな意味として解釈し、逆に処理が難しい刺激をネガティブな意味として解釈する傾向を報告しています。

例えば食品添加物を例に挙げて考えてみましょう。

「ペクチン」と「カルボキシメチルロースナトリウム」という名前の食品添加物であれば、どちらの方が安全だと感じますか。

どちらも厚生労働省により安全が保障されていますが、事前情報がない場合は、名前が長く、読むのが難しい「カルボキシメチルロースナトリウム」の方が危険なのではと思ったのではないでしょうか。

つまり、私たち人間は新しい情報と出会ったときに、その情報が簡単かどうかが、心理的評価において大きな影響を持っているのです。

簡単な名前の人は採用されやすい

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あなたはある企業の新卒採用担当です。

もし全く同じ能力の応募者がいたとして、片方の名前は「鈴木大輔」、もう片方の名前が「鈴木玲央那瑠斗(れおなるど)」だとしたらどちらを採用しますか。

片方はよく見かけるような一般的な名前で、もう片方はフリガナが振っていないと読めないような名前、いわゆるキラキラネームです。

おそらく前者の「鈴木大介」を採用するのではないでしょうか。

近年の研究によると、簡単に発音できる名前の人のメリットは印象の良さ、発言の信憑性の高さに留まらず、雇用されやすいことも報告されています。

アメリカのヴァッサー大学のチー・グァー氏(Qi Ge)らの研究チームは、米国の経済学博士課程の大学院生1660名を対象に、名前の発音のしやすさと雇用のされやすさの関係性に関する調査を行っています。

調査の結果、名前が長く発音しにくい学生ほど、専門的な仕事に就きにくく、研究成果の低い研究機関に就職する可能性が高いことが確認されました。

また別の2012年のオーストラリアのメルボルン大学のシモン・ラハム氏(Simon Laham)らの研究チームは、法律事務所において簡単な名前の人の方が難しい名前の人よりも高い地位に就いていることを報告しています。

これらの結果は、名前の発音のしやすさが採用や人事の評価などの企業にとって重要な意思決定の際にも影響を与えることを示唆しています。

研究チームは「今回の研究結果は名前の発音のしやすさの影響が、これまで考えられていたよりも広範囲に及ぶということです。今後の研究では、目撃者の名前の発音のしやすさが陪審の評決にどのような影響を与えるかなど、多様な状況で検討を行う必要がある」と述べています。

複雑な名前には、印象に残りやすいなどのメリットもあるかもしれませんが、「名は体を現す」という言葉が生まれるように、名前はその人の印象に大きな影響を与えることがさまざまな研究から示されています。

名前をつける際にはこうした影響も考慮して慎重に決定するべきでしょう。

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参考文献

Will you be hired if no one can pronounce your name? https://www.efinancialcareers.com/news/2022/05/name-pronunciation-bias Study: People More Likely To Trust Strangers With Easily Pronounced Names https://www.cbsnews.com/sacramento/news/study-people-more-likely-to-trust-strangers-with-easily-pronounced-names/

元論文

People with Easier to Pronounce Names Promote Truthiness of Claims https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0088671 How Do You Say Your Name? Difficult-To-Pronounce Names and Labor Market Outcomes https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=4031991
情報提供元: ナゾロジー
記事名:「 簡単な名前の人は親しみ深く、危険性が少なく、信頼性が高いと判断される