- 週間ランキング
まず実験を開始する前に、参加者たちを、箱の選択を自分でするグループと、自分でしないグループの2つに分け、事前にどちらの箱からビー玉を引きたいかと、ビー玉を引いた後の結果に対する興味の強さを回答してもらいました。
また最後のビー玉の結果の表示のところでは、結果の不確実性が興味与える影響を調べるために、結果が表示されるときと表示されない時がありました。
この実験では、ゲーム内でより多くのポイントを獲得できれば、実験への参加報酬金額が増えました。そのため、より多くの報酬を得るためには、箱の中の期待値(獲得できると期待できるポイントの大きさ)がより高い箱を選びビー玉を引く必要があります。
さて自分で選択するか否かによって興味の強さに違いはあったのでしょうか。
実験の結果,自分でビー玉を引く箱を選んだ場合には、選ばなかった場合と比較して、引いたビー玉の結果に対し強い興味を抱く傾向が見られました。
この実験では、顕在的な興味に焦点を当てたのに対し、後続の実験では、結果が待ち遠しいかという潜在的な興味に着目し、同様の実験デザインで検討を行っています。
実験の手続きは最初の実験と同様で、大きな違いは最後にビー玉の得点の結果が「待ち遠しい」かどうかを尋ねています。
実験の結果、選ばなかった場合と比べて、自分でビー玉を引く箱を選んだ場合には、より結果を待ち遠しいと思う傾向が確認されました。
これらの結果は、最初に自分がビー玉を引きたいと思っていた箱を引いたとしても、自分が選んでいなかった場合には、興味や待ち遠しさが弱くなってしまうことを意味しています。
つまり自分で選ばず、友達の紹介やレコメンドによって視聴した映画は、たとえ内容が自分の好みと合ったとしても、興味・関心は薄くなっており、内容を楽しむことができない可能性があるのです。
今回の研究結果では、自己選択は顕在および潜在的に興味を高める効果を持っていることを明らかにしました。
具体的には、ビー玉を引く箱を自分で選んだ場合、結果を待ち遠しく、興味を強く感じる傾向が確認されました。また自己選択せず、事前に興味を持った箱を、最終的に獲得できたとしても、興味が低下する傾向もありました。
たとえば、プログラムの参加を自分が選ぶ場合と事前に参加が決まっている場合の違いを考えてみてください。
そこには、参加にあたっての動機の有無、参加を決めた経緯など関与の度合い、主体感などに違いがあるはずです。すでに決まっているプログラムが自分が望んでいた方であれば、自己選択する必要はないと思うかもしれません。
しかし最終的に望む結果を得ることができても、自主選択が伴わないと興味が低下してしまうのです。
興味が高い状態が保てると、課題中の認知的機能の上昇や標達成率の向上までさまざまなメリットがあります。
これらの理由から選択を他の人やサービスに任すのではなく、自分自身で選択を行う方が良いといえるでしょう。
研究チームは「自由な選択肢は、興味を高め、学習・記憶を高める方法として有用である。一番効果が期待されるのは教育で、選択が興味や学習に与える影響のより詳細な理解を今後の研究に期待したい。」と述べています。
教育の分野では、学習指導要領によって学習内容や教材は指定されていることが多いかもしれません。そのなかでも、取り組む問題の種類や順番など、小さな部分から生徒の自己選択の機会を増やし、日々の学習に対する興味・関心を高くできるかもしれません。
参考文献
Having a Choice Boosts Your Curiosity https://www.psychologytoday.com/intl/blog/why-so-curious/202306/having-a-choice-boosts-your-curiosity Uncertainty increases curiosity,but decreases happiness https://www.nature.com/articles/s41598-021-93464-6元論文
Choice Boosts Curiosity https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36287129/