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当のメカジキは漁師たちが船に引き揚げた際はまだ息をしていましたが、傷口から血が止まらず、すぐに絶命しました。
ウォーカー氏は「傷がかなり新鮮なので、メカジキは釣り上げられる数分前に攻撃されたのだろう」と述べています。
氏は以前から同じような傷を持った魚をたびたび見かけていましたが、これほど多くの傷痕を負った魚は初めてだという。
しかし専門家の目から見るとメカジキに傷痕を負わせた犯人の正体は明白だといいます。
その犯人の名前は「ダルマザメ(学名:Isistius brasiliensis)」です。
ダルマザメはヨロイザメ科に属するサメの一種で、体長30〜50センチと小柄です。
普段は水深1000メートル付近の深海に生息していますが、獲物を求めて浅い場所まで浮上してきます。
彼らの最大の特徴はなんと言っても口です。
英名で「クッキーカッターシャーク(Cookie-cutter shark)」と呼ばれる通り、クッキーをくり抜くときの型のような口をしています。
これで獲物の体に噛みつき、体をひねるように回転させて相手の肉をくり抜くのです。
またダルマザメは恐れ知らずの魚として知られ、自分より大きな相手にも臆することなく噛みつきます。
今回のメカジキもそうですが、他にクジラやホオジロザメ、海の頂点捕食者であるシャチまでも標的とします。
私たちヒトは住む領域が違うので基本的に襲われることはありませんが、2009年に一度だけ、ハワイ沖で遠泳の選手が胸と左ふくらはぎを噛まれたケースがあるそうです。
ウォーカー氏いわく、ダルマザメは「標的が遊泳している隙にすばやく忍び寄って、肉の塊をくり抜き、相手に反撃の時間を与えることなく、即座にその場を後にする」という。
さらにダルマザメは自分から標的に近づくだけでなく、より小さな魚のふりをすることで獲物を誘き寄せるといいます。
彼らの腹部には「発光器官」が点在しており、それを水中で光らせます。
すると、下から見上げる魚たちの目には、ダルマザメのお腹が陽光を反射する水面と同化してしまい、胴体がほとんど見えなくなります。
このとき、発光していない小さな頭だけがシルエットとして浮かぶため、ダルマザメの下を泳いでいる魚たちの目には獲物の小魚が泳いでいるように見えるのです。
そこで寄ってきた魚に対して、ダルマザメはタイミングを見計らって身をひるがえし、逆に相手の肉をくり抜いて逃げていくのです。
ダルマザメが相手に与える傷痕はたいてい3つ4つで、致命傷にはなりません。
しかし今回のように何十箇所もの傷が一度にできれば、出血多量で死んでしまうでしょう。
ウォーカー氏は、今回のメカジキは集団のダルマザメによって襲われた可能性が高いと述べています。
大柄なクジラやシャチからするとダルマザメは蚊みたいな存在でしょうが、群れで襲撃されては流石にタダで済まないかもしれません。
参考文献
Swordfish missing circle-shaped chunks of flesh hauled in by fishers. What bit it? https://www.livescience.com/animals/fish/swordfish-missing-circle-shaped-chunks-of-flesh-hauled-in-by-fishers-what-bit-it Fisherman Shocked After Reeling in Swordfish Covered in Strange Round Holes https://www.newsweek.com/fisherman-shocked-after-reeling-swordfish-covered-strange-round-holes-1814523