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その一方で、研究者らは「入浴の習慣が長期的なうつ病の発症リスクに関連するかどうか」に関心を持っていました。
そこで今回の研究では、年齢的にうつ病を発症しやすい高齢者を対象として調査を行うことに。
高齢者のうつ病は要介護状態に陥るきっかけともなるため、その予防は喫緊の課題です。
本調査では、全国14の自治体から65歳以上の高齢者約3200人を2010〜2016年にわたって追跡しました。
対象となった高齢者は自立していて、老年期うつ病評価尺度(Geriatric Depression Scale:GDS)が4点以下の「うつ無し」と診断され、さらに夏場と冬場の入浴頻度のデータが正確に収集できている人々です。
研究チームは、対象者を「週0〜6回の入浴をしているグループ」と「週7回以上の入浴をしているグループ」に分類し、6年後の追跡調査で、GDSが5点以上の「うつ病」と診断された割合を調べました。
入浴習慣とうつ発症との関連性を明確にするべく、結果に影響を与えそうな他の要因(年齢・性別・治療中の病気・喫煙・飲酒・婚姻状況・教育年数・経済状況)も考慮して調整しています。
データ分析の結果、6年後のうつ発症割合は、夏の入浴回数が週0〜6回の人で12.9%、週7回以上の人で11.2%、冬の入浴回数が週0〜6回の人で13.9%、週7回以上で10.6%となっていました。
いずれも週7回以上の入浴をしている人ではうつ発症率が有意に低くなっていたのです。
他の要因を考慮したオッズ比(見込み)の解析では、夏の入浴回数が週0〜6回に対して週7回以上のうつの罹りやすさは0.84倍、冬の入浴回数が週0〜6回に対して週7回以上のうつの罹りやすさは0.76倍という結果が出ています。
この有意差について研究者は、入浴の温熱作用を介した自律神経のバランス調整作用や睡眠改善がうつ発症の予防につながったと推察しました。
また、湯船に浸かることがうつ病の予防につながることを示した結果は世界で初めてです。
これをもって、毎日の入浴が高齢者の心身の健康維持に重要な習慣であることが証明されました。
本研究はうつ病を発症しやすい高齢者のみを対象としていますが、将来的な予防の意味合いでは若年層にも効果が期待できるかもしれません。
日本ではこれまで、うつ病は40〜50代で発症率が高くなるとされてきましたが、現代社会の生きづらさやコロナ禍の影響により、うつ発症はもはや中高年層だけの問題ではなくなっています。
また、うつ病や不安障害を持つ人々は家に引きこもりがちで、お風呂にもなかなか入れなくなることが指摘されています。
入浴が若者のうつ予防にも効果があるかどうかは今後の研究が必要ですが、年齢問わず、入浴が心身への健康を促進することは間違いありません。
暑い夏は何かとシャワーで済ましがちですが、お風呂に積極的に浸かることで、心も体も健康に保つことができるでしょう。
参考文献
毎日お風呂に入れば「うつ病」を予防できる(PDF) https://www.jages.net/library/pressrelease/?action=cabinet_action_main_download&block_id=3849&room_id=549&cabinet_id=234&file_id=13620&upload_id=17752元論文
Association between Tub Bathing Frequency and Onset of Depression in Older Adults: A Six-Year Cohort Study from the JAGES Project https://www.jstage.jst.go.jp/article/onki/advpub/0/advpub_2359/_article