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そのため研究者らは、タウタンパク質の凝集や蓄積を防げば、アルツハイマー病の発症予防や症状の緩和につながるのではないかと考えているのです。
しかしこれまで、血液や髄液検査によってタウタンパク質を特定できる手段は確立されているものの、タウタンパク質の凝集と蓄積を止めたり、解消する方法は見つかっていません。
一方で近年の研究では、コーヒーに含まれるカフェインなどの成分がアルツハイマーを含む神経変性疾患に対して、有益な効果を持つ可能性が示されつつあります。
そこで研究チームは今回、コーヒー豆の成分を高濃度で抽出する「エスプレッソ」を対象に実験を行いました。
エスプレッソは、コーヒー豆を細かく挽いた粉をお湯に通し、高い圧力をかけて短時間で抽出したものです。
一見すると色が濃くて苦そうに見えますが、時間をかけずに素早く抽出するためコーヒーの嫌な雑味がまったくありません。
コーヒーの旨味を高濃度で抽出しており、酸味と苦味のバランスが取れたコク深い味に仕上がっています。
エスプレッソは濃い味の好きな人に最適であり、日本ではエスプレッソにミルクを混ぜたカプチーノやカフェラテも人気です。
さて、研究チームは市販のコーヒー豆(15g)からエスプレッソ(80mL)を抽出し、その中からカフェイン、トリゴネリン、ゲニステイン、テオブロミンという化合物を単離しました。
実験では、エスプレッソの抽出物全体と、カフェイン、トリゴネリン、ゲニステイン、テオブロミンを別々のペトリ皿に入れ、そこに短鎖型のタウタンパク質を加えて40時間培養しています。
その結果、エスプレッソ抽出物全体、カフェイン、ゲニステインの3つを入れたペトリ皿で、タウタンパク質の凝集が阻害されていることが判明したのです。
ここでは短鎖型のタウタンパク質が互いに寄り集まって長い鎖を形成する繊維化ができなくなっていました。
中でもエスプレッソ抽出物全体の効果が最も著しく、タウタンパク質の繊維化が損なわれるだけでなく、逆に短くなったと研究者は説明します。
さらに、この短くなったタウタンパク質はヒト細胞にまったくの無害であり、加えて、凝集を起こすタウタンパク質の「種」としても機能しなくなっていることが確認されました。
また以前の研究で、コーヒーに含まれるカフェインやゲニステインなどの化合物は、消化器系で処理された後に、血液と脳の間のバリア(血液脳関門)を通過して脳に到達できることが分かっています。
つまり、エスプレッソを飲むことで、脳内におけるタウタンパク質の凝集と蓄積を止められるかもしれないのです。
ただしこれはまだ可能性の話であり、それを確かめるにはヒトを対象とした臨床試験を実施しなければなりません。
それでも研究チームは今後の実験を通して、エスプレッソがアルツハイマー病の新たな予防や治療法の開発につながることに大いに期待しています。
結果が出るまではとりあえず、エスプレッソを楽しんでおいて損はないでしょう。
参考文献
Espresso can prevent Alzheimer’s protein clumping in lab tests https://www.acs.org/pressroom/presspacs/2023/july/espresso-can-prevent-alzheimers-protein-clumping-in-lab-tests.html Italian Study Shows How Espressos Keep Alzheimer’s Protein Clumps In Check https://www.sciencealert.com/italian-study-shows-how-espressos-keep-alzheimers-protein-clumps-in-check How Coffee Could Protect Against Alzheimer’s: Espresso Found To Inhibit Tau Proteins https://www.iflscience.com/how-coffee-could-protect-against-alzheimers-espresso-found-to-inhibit-tau-proteins-69915元論文
Espresso Coffee Mitigates the Aggregation and Condensation of Alzheimer′s Associated Tau Protein https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.jafc.3c01072