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ダンゴムシは、”イリドウイルス”に感染することで体色が鮮やかな青色になります。
つまり青いダンゴムシは、何千種類いるうちの一つではなく、「イリドウイルス」という病原体に感染してしまったために青くなってるのです。
このイリドウイルスは動物全般に感染するウイルスの一種で、1954年にガガンボの幼虫からはじめて発見されました。その後、昆虫だけでなく、特定のほ乳類や魚類、両生類、軟体動物にしか感染しないものが見つかります。
今回の青いダンゴムシのウイルスも、ダンゴムシだけにしか感染しないため、人間が触っても感染することはありません。
青い色はウイルスそのもので、感染すると体内で増殖して結晶のように固まり、体に蓄積されるようになります。そこに光が当たることで青く見えているということです。
ただ、感染したすべてのダンゴムシが変色するわけではなく、個体内でウイルスが規則的に並んだものだけに色が現れます。
通常のダンゴムシの数よりも少ないため、見つけにくいのは当然なのですが、病気にかかっているために早く死んでしまうので、通常のダンゴムシよりも見つけるのが難しいとされています。
なぜイリドウイスルは、ダンゴムシを青く染めるのでしょうか?
これについて今回の研究を報告している野川氏は、これがウイルスの感染戦略に関係していると説明しています。
イリドウイルスに感染した個体は地表の見つけやすい所に出現し、かつ色で目立たせることで鳥などの捕食者に食べられやすくしていると考えられるのです。
鳥などに捕食されると、その鳥がした糞をまたダンゴムシが食べることで、イリドウイルスの感染が広がっていきます。
自然界では、このように他の生き物を仲介して、自分の子孫を広げる性質を持った生き物は珍しくありません。
たとえば、ロイコクロリディウムという寄生虫の一種は、幼虫の時はカタツムリに、成虫では鳥に寄生します。
そして、鳥の体内で産みつけられた卵は、まず鳥の糞とともに排出され、カタツムリがそれを食べます。そしてカタツムリの体内で幼虫が孵化し、そのカタツムリに寄生します。
その後、カタツムリが鳥に食べられると鳥に寄生し、成虫となり、また卵を産むという繰り返しになります。
ロイコクロリディウムもイリドウイルスも捕食者に食べられるように、宿主を誘導することで子孫を残し続けてきたのです。
ただ、イリドウイスルの実際の感染経路がどのようなものであるのか、またどのような場所で発生しやすいかについては、まだはっきりしたことはわかっていません。
この青いダンゴムシは、全国どこの地域でも確認されているため鳥のような目線を持っていれば、どこかで見かけることがあるかもしれませんね。その際はぜひ近くで観察してみてください。
参考文献
無脊椎動物のイリドウイルス https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsv1958/34/1/34_1_1/_article/-char/ja/ 青いダンゴムシ、その正体は? 愛南で児童ら発見 https://news.yahoo.co.jp/articles/4256733a8690cb03d5e4face297a4b6809c0d2fd ロイコクロリジウムQ&A https://www.kiseichu.org/leucochloridium元論文
奈良県内における青いダンゴムシの発見報告について https://www.jstage.jst.go.jp/article/kashikon/1/0/1_21/_article/-char/ja