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このディスプレイ盲を解消する方法として「音を流す」ことが提案されています。
デジタルサイネージに内蔵したスピーカーを使って、広告の内容に沿った音声を流せば、視覚的に気づかなくても聴覚に訴えることが可能です。
しかし、ここにも問題があります。
音を流しっぱなしにすると、広告に興味がない人にとって騒音となってしまい、公共空間の快適性が損なわれる可能性があるのです。
そこで「ディスプレイ盲」を解消しながら「騒音」も発生させない新たな方法が必要とされています。
研究チームはこれらの難点を解決する方法として、「ピンポイントなチラ聞かせ音」を用いたシステムを考案しました。
これは広告の前を通った人に対して、その人がいる特定領域に向けて指向性の強い音を短時間だけ発生させるシステムです。
また、音の方向や距離感を感じ取ることのできる「立体音響」を利用することで、サイネージが複数あっても、どのサイネージから音が流れているかが直感で分かるようになっています。
さらに音声を流した後は、通行人の顔の向きから広告に対する注目度合いを測定し、これに応じて音量を自動で調節します。
つまり、広告を見ているときだけ音声が聞こえるようになるのです。
チラ聞かせで興味を持たなかった人には音を流さないことで、騒音の問題を防ぎます。
チームはこの効果を検証すべく、大学構内に模擬店舗を設置し、33名の被験者に買い物をしてもらいました。
またデジタルサイネージの説明は一切しないことで、被験者には実験意図が分からないようにしています。
その結果、ピンポイントなチラ聞かせ音を流すことで、従来のサイネージ研究よりも、より多くの人が広告に興味を持ちやすくなることが判明したのです。
被験者の多くは一度サイネージに引きつけられると、従来のスピーカーを用いた場合よりも長い時間広告を見続けていました。
加えて、実験後のアンケート調査では、買い物中の突然の音再生により、騒音やネガティブな影響を受けなかったことが示されています。
以上の結果から「ピンポイントなチラ聞かせ音」は、ディスプレイ盲と騒音の2つの課題を解決する方法として有効であると結論されました。
これと同じシステムは、サイネージ広告に限らず、ニュースや交通情報を含む多様なシーンでの応用が期待されています。
今後、街中では「あなた」にだけ話しかけてくれるような電子看板が増えるかもしれません。
将来的には、電子広告にAIを組み込めば、通行人の性別や年齢、服装などに合わせて、興味のありそうな広告を提示することも可能になるかもしれません。
参考文献
ピンポイントな「チラ聞かせ」がデジタルサイネージ広告の認知を高める https://www.tsukuba.ac.jp/journal/technology-materials/20230530144500.html元論文
Attracting Effect of Pinpoint Auditory Glimpse on Digital Signage https://ieeexplore.ieee.org/document/10109739