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この実験で用意された「人間の食べ物(エサ)」は、色(青と緑)の異なる「ポテトチップスの袋」であり、人間(実験者)の近くに配置されました。
そして次の3つのケースで、カモメが接近したりエサをつついたりするか調べたのです。
実験の結果、袋に近づいてきたのは、カモメ全体のうち、フリー条件で48%、青色もしくは緑色条件で、19%でした。
しかし実際に袋をつつく割合は、青色もしくは緑色条件(21%)の方が大きく、フリー条件では2.5%でした。
そして興味深いことに、ポテチの袋をつついたカモメのうち95%が、実験者が持っている袋と同じ色の袋をつつきました。
カモメは近くの人間を観察し、持っている袋が青色なら青色の袋をつつき、持っている袋が緑色なら緑色の袋をつついたのです。
このことは、セグロカモメが周囲の物体を識別・比較する能力を持っていることを示しています。
またその優れた能力で、人間の選択を観察し、得た情報を利用して自分が何を食べるべきか決定していることも分かります。
カモメたちはあえて「人間と同じ食べ物」を盗もうとしていたのです。
加えてこの実験では、袋をつついたカモメの86%が成鳥であることも分かりました。
接近したカモメの数は成鳥と幼鳥で差が無いのに対し、実際に「盗む」という行動に出るのは、ほとんどが大人だったのです。
このことは、知的なカモメにとって人間の食べ物を盗む行為が依然としてリスキーであり、幼鳥にはそのために必要な大胆さやスキルがまだ備わっていないことを示唆しています。
実は、同じく人間の食べ物を盗む「トビ」も警戒心が強く、人間の中でも比較的トビに狙われやすいのは、トビにとって危険レベルの低い「小さな子供たち」だと言われています。
鳥たちは人間から食べ物を盗みますが、それに伴う危険を承知の上で、生き残るために行っているのでしょう。
また研究チームは、セグロカモメの都市化が約80年前に始まったことに触れ、カモメの特殊な採餌行動が長期にわたる人間との共存の結果で生じたわけではないことを強調しています。
つまりセグロカモメは、もともと鋭い観察能力と行動の柔軟性を持った鳥であり、その多才な能力のおかげで都市環境にうまく適応できたと考えられます。
そして「カモメの盗み」を防止するためには、単に「鳥にエサをあげないでください」という看板を設置するだけでは効果が薄いことも分かります。
カモメが持つ卓越した観察能力や適応力を考慮に入れた、もっと高度な対策が必要なのかもしれませんね。
参考文献
Greedy gulls decide what to eat by watching people – new research https://theconversation.com/greedy-gulls-decide-what-to-eat-by-watching-people-new-research-206144元論文
Inter-species stimulus enhancement: herring gulls (Larus argentatus) mimic human food choice during foraging https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsbl.2023.0035