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私たちの多くは理科の実験や洗濯などの家事を通して、水を早く乾かすには高い温度が有効であることを学びます。
ドライヤーが熱風を出すのも、洗濯乾燥機が熱くなるのも、高温のほうが素早く水を蒸発させられるからです。
では地球温暖化の影響で気温が急激に上昇した場合、地球上に存在する湖はどうなるのでしょうか?
残念なことに、これまで行われた湖の水量にかんする研究の多くは、アラル海やカスピ海、死海など特定の湖にかんするものばかりであり、地球規模の傾向については不明となっていました。
そこで今回、コロラド大学の研究者たちは世界各地に存在する1051の自然湖と921のダム湖からなる1972の大きな湖の長期的な水量変化を調べることにしました。
(※自然湖は100平方キロメートル以上、ダム湖は4平方キロメートル以上のものが選別されました。またここで言うダム湖には大きな意味での貯水池も含まれています)
調査対象となった1972 カ所の水量は、それぞれ地球の自然湖とダム湖の96%と83%に及ぶため、地球規模の湖の水量を把握するための対象として不足ありません。
調査にあたっては1992年から2020年にかけて撮影された湖の衛星写真が用いられ、約30年間にわたる水量変化が調べられました。
すると、驚きの事実が判明します。
調査対象となった1972の湖のうち過半にあたる53%において、水量の有意な減少が確認されたのです。
また失われた水量を計算したところ、全体で600立方キロメートルに及ぶことが判明しました。
この水量は米国最大のダム湖として知られるミード湖の17倍に及ぶ水量となります。
一方、水量の増加が観察されたのは全体の22%、有意な違いがなかったものは33%となりました。
下の図は調査対象となった湖の水量変化を視覚的に示したもので、自然湖は濃い赤と濃い青、ダム湖は薄い赤と薄い青で示されており、赤系のものは水量減少、青系のものは水量が増加した湖を示しています。
また丸の大きさは変化した水量に応じています。
次の図は水量が減少した自然湖(濃い赤)とダム湖(薄い赤)のみを抽出したものです。
中央ややみぎ寄りで矢印で示された大きな赤丸はアラル海・カスピ海・死海となっています。
また黄色い楕円で囲われたカナダや南米のあたりに赤い丸が集中していることからわかるように、湖の水量減少は乾燥地帯に限らず、高緯度地域や湿潤地域を含む地球のあらゆる環境で起きていることがわかります。
一方、次の画像は日本の本州を拡大したもので、猪苗代湖、霞ケ浦、琵琶湖の水量が減っていることが示されています。
世界規模で発生している湖の水量減少は日本も例外ではないようです。
また世界規模で起きている湖の水量減少の原因を分析したところ、自然湖の水量喪失は温暖化にともなう蒸発や人間の活動による影響が大きいことが判明しました。
一方ダム湖の水量喪失は、時間経過とともに湖の底に流れ込んた土砂などの堆積物が主な影響であることがわかりました。
さらに研究者たちが湖の水量減少に影響を受ける人々を試算したところ、世界人口の4分の1にあたる20億人にのぼることが示されました。
もし温暖化対策が失敗したり水の計画的な利用なされなければ、湖の水量喪失は進行し、億単位の人々が深刻な水不足に陥るでしょう。
参考文献
Global Lake Water Storage Trends and Drivers https://cires.colorado.edu/globallakes元論文
Satellites reveal widespread decline in global lake water storage https://www.science.org/doi/10.1126/science.abo2812