- 週間ランキング
また興味深いことに、フライドポテトを好んで食べていた人は、ささみフライを食べていた人に比べて、うつ病の発症リスクが2%高くなっていたそうです。
これらの結果は、揚げ物を頻繁に食べることで不安やうつ症状のリスクが高まることを示唆しています。
それでは、なぜ揚げ物の食べ過ぎが「心へのダメージ」を引き起こすのでしょうか?
チームはその原因物質についても調べてみました。
チームは精神疾患を引き起こす原因物質として、揚げ物に多分に含まれる「アクリルアミド」に着目しました。
アクリルアミドは、タンパク質と炭水化物が120℃以上で高温加熱されたときに化学反応を起こして発生する有機化合物です。
パンやクッキー、クラッカー、コーヒーに多く含まれ、特に炭水化物の豊富なジャガイモを揚げたフライドポテトやポテトチップスには高濃度に含まれることが分かっています。
つまり、フライドポテトの食べ過ぎでうつ病リスクが増加したという先の結果も、アクリルアミドが原因である可能性が予想できるのです。
先行研究では、アクリルアミドを過剰に摂取した場合、神経系がダメージを受けて、筋力低下・感覚異常・知覚麻痺・歩行異常などが起きる可能性が示唆されていました。
これはアクリルアミドが神経系のタンパク質と結合することで神経毒性を示すためです。
また動物実験では、多量摂取が発がんリスクの増加と関連していることも示されています。
しかし、アクリルアミドが不安やうつ病に関連することを調べた研究はほぼありませんでした。
そこでチームは実験として、社会性の高いモデル生物として知られる「ゼブラフィッシュ」を対象に、アクリルアミドを長期にわたって投与し続けました。
すると、アクリルアミドに晒され続けた個体は水槽内を探索する能力が大幅に低下し、水槽の暗い区画に棲みつくようになったのです。
加えて、ゼブラフィッシュには群れを作る習性があるのですが、ここにも加わらず、単独で行動することが多くなっていました。
これはアクリルアミドが不安やうつ症状を誘発し、社会性を低下させていることを示すものです。
ただし以上の結果はまだ予備的な段階にあり、揚げ物が精神疾患のリスク増加にダイレクトに繋がっているとは断定できません。
たとえば、英レディング大学の栄養・食品科学の専門家であるグンター・クーヌル(Gunter Kuhnle)氏は「揚げ物の過剰摂取者は喫煙や肥満、低所得、低学歴の割合が高く、これらは揚げ物の摂取以前に、メンタルヘルスに影響を与える可能性が十分にある要因である」と指摘しました。
また、揚げ物を食べるから心に問題が起きたのか、それとも心に問題を抱えているから揚げ物を頻繁に食べるようになったのかもはっきりしていません。
それでも浙江大学の食品科学者で研究主任のチャン・ユー(Zhang Yu)氏は「揚げ物の悪影響について今すぐパニックになる必要はありませんが、揚げ物の消費量を減らすことでメンタルヘルスを管理するのには役立つでしょう」と話しました。
揚げ物があまり健康に良くないということを自覚している人は多いでしょう。
揚げ物は提供も手軽でさまざまな場所で食べる機会があるため、多少はこのアドバイスを心に留めておいても損にならないはずです。
参考文献
Frequent fried food consumption linked to anxiety and depression https://medicalxpress.com/news/2023-04-frequent-fried-food-consumption-linked.html Eating French fries and other fried foods linked to higher risk of anxiety and depression https://www.medicalnewstoday.com/articles/fried-foods-french-fries-linked-to-anxiety-depression 食品に含まれているアクリルアミド(農林水産省) https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/acryl_amide/a_kiso/syokuhin.html元論文
High fried food consumption impacts anxiety and depression due to lipid metabolism disturbance and neuroinflammation https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2221097120