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こうして乾かしたタオルを袋に入れて15時間密封し、タオルから放出された化学物質を採取。
比較として、何も入っていない空の袋や洗濯していないタオル、それからタオルを干した場所の空気も同様の手順で集め、ガスクロマトグラフィー質量分析で匂い成分を分析しました。
プグリエーセ氏によると、主観的には明らかに天日干ししたタオルで最も強く「お日様の匂い」を感じたといいます。
そして分析の結果、直射日光の下で干したタオルからのみ、香水の原料としても使用される化合物のアルデヒドやケトン、香辛料のカルダモンに含まれるペンタナールが検出されたのです。
さらには、柑橘系の爽やかな香りのもとになるオクタナール、バラのような香りがするノナナールなども見つかりました。
こうした化合物が「お日様の匂い」の正体だったのです。
プグリエーセ氏は、天日干ししたタオルからこれらの化合物が発生した理由について「空気中のオゾンガスや日光の働きのおかげ」だと考えています。
具体的には、濡れたタオルの素材と空気中のオゾンガスが反応することで、アルデヒドやケトンが生成されるという。
それから、濡れタオルに含まれる水滴が虫眼鏡のように機能して太陽の紫外線を集光し、それによりタオル中の化学物質が活性化して、匂い成分の合成が促されるとのこと。
またタオルに含まれる顔料や染料も太陽光を吸収して化学変化を起こすことが知られています。
氏によると、こうした化学反応は雨後の草むらなど多くの場所で発生しているそうですが、特に天日干ししたタオルから香りやすいのは、綿の繊維が匂い成分を閉じ込めて保持しやすくなっているからと指摘します。
ということで、布団や洗濯物の「お日様の匂い」はダニの死骸ではないことが分かりました。
実は日本の化粧品メーカーであるカネボウ化粧品が2001年に、ダニの死骸ではないことをより直接的に調べた研究結果を報告しています。
同社の実験では、綿などの繊維に含まれるセルロースが直射日光によって分解され、脂肪酸やアルデヒドといった微量な揮発性物質を発生させることが確認されました。
これはプグリエーセ氏の研究結果とも合致します。
また実験では、ダニが存在しない条件下でも「お日様の匂い」が発生したことから、ダニの死骸とは無関係であることが実証されました。
そもそも「お日様の匂い」が本当にダニの死骸なら、ダニは日光に当たらなくてもしょっちゅう死んでいるので、布団や衣服からは常に「お日様の匂い」が放出されることになります。
さらに嬉しいことに、同チームは「お日様の匂い」にリラックス効果があり、睡眠の質を高める脳波を作り出すことも発見したのです。
昨今では、部屋干しでもカビ臭くならない柔軟剤が浸透しており、室内で洗濯物を干す機会も多いでしょう。
しかし、より心地いい香りやリラックス効果を求めるなら、やっぱり洗濯物はお日様の下に干した方が良さそうです。
参考文献
Why Laundry Smells Better When Hung Outside To Dry https://www.iflscience.com/why-laundry-smells-better-when-hung-outside-to-dry-68517 The secret of line-dried laundry’s fresh scent https://science.ku.dk/english/press/news/2020/the-secret-of-line-dried-laundrys-fresh-scent/元論文
Chemical analysis and origin of the smell of line-dried laundry https://www.publish.csiro.au/en/EN19206