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それだけでなく、ドライバーの事故リスクは睡眠時間が1時間短くなるごとに大幅に増加していました。
前夜の睡眠時間が0〜4時間だった場合では、事故リスクに最大15倍の開きが見られたのです。
つまり、睡眠時間が短いほど疲労度も高まり、自動車事故のリスクも増大すると言えます。
チームは以上の科学的根拠にもとづき、「ドライバーが運転前に一定の睡眠時間を確保することを法的に義務付けることは合理的な判断である」と述べました。
もし飲酒運転と同じような基準値(日本では血中アルコール濃度0.03%以上)を設けるなら、「運転前に最低4〜5時間以上の睡眠」の義務付けを検討すべきでしょう。
他方で、研究者らは「疲労状態での運転を取り締まる前に、もっと多くのことを見直さなければならない」と話します。
というのも、飲酒はほとんどの場合、個人が選択して行うことですが、寝不足での運転は個人では改善しようがない部分があるからです。
たとえば、バスやタクシー、長距離トラックの運転手など、仕事上どうしても寝不足の状態で運転しなければならない人たちがいます。
他にも、夜間勤務で睡眠時間が少ない人、子供の夜泣きで寝不足の母親、慢性的に睡眠障害がある人など、まともに寝れていない状態で運転を迫られる人々がたくさんいるのです。
これは個人の力では改善のしようがなく、職場や家庭を含む社会全体での見直しを必要とします。
日本国内では、すでにバスやタクシー、トラック運転手が寝不足の状態で運転することは禁止されていますが、それ以外の業種であっても職務上寝不足の状態での運転を強制されてしまう場面は存在します。
こうした問題を包括的に解決する法律が今後必要になってくるはずです。
また、現在のところ個人の運転に対して睡眠時間にもとづいて規制する法律がありません。
ダブルワークでドライバー業務を選択する人の睡眠不足は、当然単体の会社の規定だけで取り締まることが難しくなるでしょう。
また単に遊びすぎて寝る時間を確保できず、そのまま運転に出るような人も取り締まる必要があります。
睡眠不足運転が飲酒運転と同等に危険であるならば、これらを規制する法律は当然必要となってくるでしょう。
米ニュージャージー州には、ドライバーが運転前24時間における睡眠が0時間の場合に規制を受ける「マギーズ・ロー(Maggie’s Law)」という法律があります。
これは1997年に当時20歳の女子大生マギー・マクドネル(Maggie McDonnell)さんが、過労状態で運転をしていた男性の車に衝突され死亡した事故を受けて施行されたものです。
ただし0時間ということは1時間でも眠っていれば問題ないということになり、明確な基準に基づいた法律とは言い難いものです。
研究チームは現在、次なるステップとして、さまざまなコミュニティのメンバーや交通安全の関係者と疲労運転を規制するための協議を行なっているところです。
こうした研究が進んでいけば、睡眠不足運転に関する具体的な基準や、規制方法の策定も進んでいくでしょう。
これと同じ取り組みは日本でも必須となる可能性があります。
参考文献
Driving on less than five hours of sleep is just as dangerous as drunk-driving, study finds https://medicalxpress.com/news/2023-04-hours-dangerous-drunk-driving.html N.J. Law Punishes Drowsy Drivers https://www.cbsnews.com/news/nj-law-punishes-drowsy-drivers/元論文
How Tired is Too Tired to Drive? A Systematic Review Assessing the Use of Prior Sleep Duration to Detect Driving Impairment https://www.dovepress.com/how-tired-is-too-tired-to-drive-a-systematic-review-assessing-the-use--peer-reviewed-fulltext-article-NSS