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今回の実験では、オオキツネタケのキノコ(子実体)6個に電極を刺すことで、野外の菌類で初となる電気シグナル伝達の観測に成功しました。
チームによると、キノコの電極を刺した直後は電気活動がほとんど計測されなかったといいます。
ところが、2日間の観測中に雨が降り、降雨が始まってしばらくするとキノコの電気的な活性が大きく変動したのです。
さらに雨が止んだ後もキノコの電気的活性は維持されていました。
次に、雨が止んだ後にキノコの電気活動が安定したときのデータを分析したところ、キノコ間の電気シグナルのやり取りに「方向性」がある可能性が示唆されました。
具体的には、キノコ1の電気活動の変化はキノコ2に即座(1秒後など)に影響を与えますが、反対にキノコ2の電気活動がキノコ1に影響を与えるには数秒程かかっていたのです。
「これはキノコ間には確かに電気シグナルの伝達があるが、その伝達には方向性があることを示唆するデータである」と研究者は指摘します。
またこの規則性はキノコ同士の距離が近いほど強くなっていたそうです。
雨が降ったことによってキノコたちがどんな会話をし、それが何の役に立っているのかはまだ分かりません。
しかし本研究の成果から、菌類が野外でも菌糸ネットワークを介した電気シグナル伝達を送り合っていることが明白になりました。
先ほど言ったように、菌根菌は地中に菌糸ネットワークを走らせて、さまざまな植物と共生関係を築きながら、植物同士を繋いでいます。
そのため今回の知見は、菌根菌を介した植物同士の電気シグナル伝達など、菌類が植物の生活や、ひいては森林生態系においてどんな役割を果たしているのかをより深く理解することに役立つでしょう。
参考文献
雨後のキノコの電気的な会話を測定-菌糸のネットワークによるシグナル伝達の可能性を野外で初確認- https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2023-03-27-1元論文
Electrical potentials in the ectomycorrhizal fungus Laccaria bicolor after a rainfall event https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1754504823000065