- 週間ランキング
そこで岩石のサンプルを持ち帰り、研究室で分析したところ、自然界にはない新種の岩石であることが判明したのです。
しかし、その正体はすぐに分かりました。
これはトリンダーデ島に元々あった堆積物に、漂流したプラスチックが浸食や熱によって溶けて混ざり、徐々に石化したものだったのです。
特に、岩石中に見られたプラスチックの主成分はほとんどが漁網の残骸だったといいます。
海に廃棄された漁網は、南米やアフリカなどの遠隔地から海流に乗ってトリンダーデ島に漂着することがよくあるという。
サントス氏は「これは海洋のプラスチックごみが島の堆積物と一体化するほど大量発生していることを意味する」と述べました。
さらに詳しく調査を進めたところ、こうした事例はすでに世界各地で散見されていることが明らかになります。
今回の発見を機にサントス氏と研究チームは、プラスチック岩石の現象をより深く掘り下げることに。
すると似たような事例は2014年以来、ハワイ、イギリス、イタリア、日本など世界各地で報告されていることが分かったのです。
ただし、それらのプラスチック岩の種類はトリンダーデ島で見つかったものとは違っていました。
チームはこれまでに発見されたプラスチック岩石を3つの種類に分けて説明します。
1つ目はプラスチックが焼かれることで石そっくりになった「パイロプラスチック(pyroplastics)」、2つ目は熱で溶けたプラスチックがその場にある有機物を取り込んで石化した「プラスチグロメレート(plastiglomerates)」です。
これらは海岸付近で起こる火災や、ビーチで焚き火をしたりバーベキューをしたことが原因で生じると見られています。
そして3つ目が今回見つかったタイプで、自然下の浸食や熱により溶けたプラスチックが岩石と混ざることで形成されます。
チームはこれを「プラスチストーン(plastistones)」と命名しました。
今回の発見についてサントス氏は「ひどく動揺した」と話します。
というのもトリンダーデ島は、これまでにプラスチック岩が見つかった場所として、最も人の居住地から離れていたからです。
つまり、プラスチックの魔の手は絶海の孤島にまで及んでいることになります。
加えて、トリンダーデ島は絶滅危惧種に指定されているアオウミガメや、その周辺にしかいない海鳥、魚、カニなどの楽園となっています。
そこでもしプラスチストーンが浸食されて有害な化学物質が環境中に溶け出すと、これら生物の命にかかわる恐れがあるのです。
サントス氏は「人類はとうとう、これまで完全に自然のものであった地質の形成プロセスに人工的な変化を加え始めている」と指摘。
「これは最近研究者たちが話題にしている、地球の生態系に人類の影響が及んでいる”人新世”の考えに合致する」と話しました。
人新世(Anthropocene)とは、地球史において人類が生態系や地球環境に与える影響が大きすぎるため、新たに地質時代を区切るべきという意見から提唱された呼び名です。
まだ公式に認められているものではありませんが、プラスチストーンのような存在は人間の寿命を遥かに超えて、何億年も地球に残り続けるものです。
プラスチック岩はまさに人類という種が繁栄した時代を示す、新しい地層を作り出しているのかもしれません。
参考文献
Scientists make ‘disturbing’find on remote island: plastic rocks https://phys.org/news/2023-03-scientists-disturbing-remote-island-plastic.html Plastic pollution is so bad there are now plastic rocks https://www.zmescience.com/ecology/plastic-pollution-has-become-so-severe-that-there-are-now-plastic-rocks-around-the-world/元論文
Plastic debris forms: Rock analogues emerging from marine pollution https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0025326X22007135