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Pepperは人間に近い姿をしているため、このロボットに対して多くの人は子供を相手にするような態度を取りますが、では単純にゴミ箱に車輪が付いただけのような単純なロボットの場合、人間はどんな態度を取るのでしょうか?
アメリカ・コーネル工科大学(Cornell Tech)に所属するFanjun Bu氏ら研究チームは、単純なゴミ箱ロボットを遠隔操作し、人々の反応を調査。
すると間抜けな動きをさせたときに人々が優しく、子犬にエサをあげるような態度で接してくれると報告しました。
ロボットの動きがぎこちない方が人々はフレンドリーになってくれるようです。
研究の詳細は、人間とロボットの相互作用に関する会議「HRI2023」と、2023年3月13日付の論文で発表されました。
目次
ヒューマンロボットインタラクション(HRI:Human–robot interaction)とは、人間とロボットがどのようにかかわるべきか研究する分野です。
例えば、小説家アイザック・アシモフ氏のSF小説に登場した「ロボット三原則(人間への安全性、命令への服従、自己防衛)」なども、この研究分野に含まれます。
現代ではAIやロボットが急速に進化し、人間と触れ合う機会も増えてきたため、「お互いにどのような影響を及ぼすのか」「どんな関わり方が適切か」などの問題を考えることは重要です。
Pepperのような人型のロボットなら、人間がどんな態度を取るかはある程度予想できます。しかし、もっと単純なロボットの場合、人はどんな関わり方をするでしょうか?
今回の研究では、シンプルな「ゴミ箱ロボット」に対して人々がどのような反応を示すのかという実験をしています。
このロボットは、ゴミ箱に車輪がついただけのもので、実際には自律したロボットではなく人間がカメラで監視しながら遠隔操作しています。
そして研究チームは、ゴミ箱ロボットをどのように操作したとき、人々の反応がどう変化するかを観察したのです。
この観察でまず最初に発見された面白い事実が、人々はロボットのオペレーターが不慣れで下手な操作をしたときほど、ロボットが自律的に動いていると勘違いした点です。
例えば、ロボットが立ち往生したり、障害物にぶつかったり、人々の声かけを無視しりしたとき、周囲の人にこのロボットをどう思うか聞いてみると「自律型に違いない」と答えるのです。
では人々は、こうしたぎこちないゴミ箱ロボットに対して、どんな態度を取ったのでしょうか?
人々は、仕事を思うように果たしてくれない清掃員に対して厳しく当たるのと同じく、ゴミ箱ロボットに対してイライラしたり、暴言を吐いたりするのでしょうか?
結果は、真逆でした。
ほとんどの人々はぎこちないロボットに優しく接し、時には引っかかっている椅子や障害物を動かして助けてあげたりしました。
またロボットの「ふらつき」を、「うなずいて同意を示している」と解釈する人もいたようです。
さらに後のアンケートでは一部の人たちは、ロボットが「ゴミを食べさせてほしい」と願っているように感じたと答えたそうです。
まるでおなかを空かせた子犬にエサを与えたくなるように、「自分にはロボットに何かを与える義務がある」と感じたというのです。
そしてゴミを持っていない人でも、ロボットを満足させたいがために、あえてゴミを拾ったり探したりして投げ込んであげていました。
研究チームは、人々のロボットに対する反応が、人間の清掃員に対する反応と対照的であると指摘しています。
人々は、人間(自分)とゴミ箱ロボットの関係では、自分が「何かしてあげる側」であり、ロボットは「してもらう側」のように捉えていました。
しかし当然、人間(自分)と清掃員の関係では、清掃員が「サービスを与える側」、自分が「サービスを受ける側」として捉えています。
確かにこうした認識の違いがあるからこそ、人々はぎこちないロボットに対しては優しくするのでしょう。
そして、「清掃員には与える義務(働く義務とも言える)がある」と感じているので、その期待にそぐわない相手に対して厳しく当たるのかもしれません。
では、なぜ人々はゴミ箱ロボットを「してもらう側」として認識するのでしょうか?
それは人々にとってロボットが、未だに「能力が低く劣った存在」だからでしょう。
そうした傾向を強く示す「ぎこちないゴミ箱ロボット」を見た人々は、赤ちゃんや幼児、子犬のように助けを必要とする存在だと考えたのです。
では、この傾向を利用して、街に自立能力の低いゴミ箱ロボットを配置し続け、ゴミのポイ捨てを減らせるでしょうか?
研究チームは、「目新しさが無くなった時に、人々の反応が維持されるかは分からない」と感じています。
現在のところ、こうした人々の反応はロボットが助けを必要としているように見えるからなのか、単に珍しいから相手してくれているだけなのか、区別することはできません。
そのため長期的にこうしたロボットを利用したとき、人々の態度がどう変化するか現時点で予測することはできません。
ただ、ロボットの性能は現在進行形で急速に進歩しているため、人間とロボットの関係性はそれに応じて変化していくはずです。
遠い将来、ロボットが人間に近い能力をもち、完全に「与える側」として認識されると、人々はロボットをに対して厳しい態度を取るようになるかもしれません。
これはSF映画などでよく扱われる「ロボットの虐待と反逆」に至る道でもあります。
参考文献
Humans (Mostly) Love Trash Robots Simple robots wander NYC asking for trash and recycling, and it’s adorable元論文
Trash Barrel Robots in the City