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ですから大人たちは、少年少女が適切な友情を育めるようサポートしてあげるべきです。
しかし、人によって求める友情の質には違いがあるはずです。
彼らが本当に求めている友情の種類を知っておくことは、上手にサポートするうえで助けとなるでしょう。
そこで今回の研究チームは、アメリカ中西部の2つの学校から73人の小学生(平均10歳)と80人の中学生(平均12歳)を対象に、どんな友情を求めているかアンケートを取りました。
彼らには友情における18の特性を評価してもらい、その中で最も重視する特性を3つ答えてもらいました。
アンケートの結果、少年少女が求める友情には、大きな差があると分かりました。
少年は友達に対して「楽しさ(昼休みに一緒にゲームするなど)」や「関わり合い(趣味や関心を共有する関係)」を求める傾向がありました。
対して少女は、「親密さ(動揺したときに慰めてくれるなど)」や「サポート(良いアドバイスをくれるなど)」を求める傾向にあったのです。
しかも、これら男女の違いは小学生の時よりも、中学生になってからの方が顕著になりました。
つまり思春期の初めごろから、求める友情の質が大きく変化し始めるのです。
ルドルフ氏は、この結果について次のようにまとめています。
「幼少期後半から青年期前半の重要な移行時期において、女の子は感情的な欲求を満たす心理的要素に価値を見いだすのに対し、男の子は興味の共有や一緒に楽しむことなど、より明確で娯楽的な要素を重視し始めます」
では大人たちは、これら少年少女の価値観の違いを十分に際立たせてあげると良いのでしょうか?
実は、そうとも言えません。
ルドルフ氏は、「友情に関する価値観をより柔軟に発展させることが大切」だと指摘します。
なぜなら、これらの友情には少なからずメリットとデメリットがあるからです。
例えば、少女が友人に親密さを強く求めるなら、共感性と感情における社会的能力が向上し、感情的な苦痛から身を守れるでしょう。
しかし、親密さを重視するあまり互いに過度に干渉し合い、かえって感情的な苦痛を増大させる恐れもあります。
同様に少年も、友人との楽しみや喜びを強く求めることで、社会性が増し、よりポジティブになれます。
しかし、親密さなどを犠牲にして一時的な楽しみばかりを求めてしまうなら、少年はストレス要因に立ち向かうのではなく、それを無視して娯楽に逃げるようになってしまうでしょう。
確かに男女で異なる友情を見分けることは大切ですが、極端になると不都合が生じてくる可能性があります。
そのためルドルフ氏は、次のようにアドバイスしています。
「両親や教師、臨床医など、子供の社会化に携わる大人たちは、若者が自分の価値観に合った友人関係を探し、作る方法を教えるべきです。
そして同時に、それぞれの友情の利点と落とし穴を理解できるよう助けることで、友人関係を改善させてあげられます」
もちろん今回の研究はかなりアメリカ人だけを対象とした小規模なものなので、人種や文化によって違いが生じるかもしれません。
研究チームは、その点も含め、今後子供たちの発達をどのように促進できるか、さらなる研究が必要だと考えています。
※この記事は2022年7月公開のものを再掲載しています。
参考文献
Boys and girls have different expectations about friendship, and these gender differences increase during adolescence
https://www.psypost.org/2022/07/boys-and-girls-have-different-expectations-about-friendship-and-these-gender-differences-increase-during-adolescence-63492
元論文
Gender Differences in Friendship Values: Intensification at Adolescence
https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/02724316211051948
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。