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この驚くべき発見は、同国のノエル・ケンプ・メルカード自然史博物館(Noel Kempff Mercado Museum of Natural History)の研究チームにより報告されました。
チームは「このような出来事は、これまで目撃された例がなく、記録されたのは今回が初めてと思われる」と話します。
ボリビアカワイルカは、南米の河川に分布する4種のカワイルカのうちの1種です。
体長は2.8メートルにもなり、細かく鋭い歯を無数に持っていて、魚やカニをむしゃむしゃと食べます。ただし、ヘビは食用にしません。
今回、彼らが口に咥えていたのは、ボリビアに生息する「ベニアナコンダ(Eunectes beniensis)」という種です。
全長は約4メートル50センチ、体重は35キロほどに達し、生息圏の頂点捕食者として、何者も彼らに近づくことはできません。
共食いの例を除けば、ベニアナコンダが他の動物に殺されたり食べられたりする光景は目撃されたことがないのです。
では、なぜカワイルカは、アナコンダを口に咥えたりしたのでしょうか?
これについて、研究チームはまだ明確な答えを出すことができていません。
最も有力なのは、アナコンダをおもちゃにしたという説明です。
イルカにとって遊びは、発達過程の重要な側面であり、子イルカが採餌や交尾に関わるスキルを練習する最適な機会となっています。
ベニアナコンダは半水棲生物で、水中でも活動できますが、その時間は限られています。
チームが観察したところ、イルカは少なくとも7分間、アナコンダを水中に押さえつけており、それによって死んだ可能性もあるようです。
また、もう一つ考えられるのが、性的な好奇心を満たすためという説です。
イルカは人間に劣らず性的に活発な生き物で、あらゆる手を使って欲求を満たします。
たとえば、バンドウイルカのオスは、自らの性器にウナギを巻きつけることがありますし、水族館では、共生しているゴンドウクジラの吹き口に、性器を挿入しようとした例が観察されています。
今回の観察では、アナコンダを弄ぶイルカが勃起しているのが確認できたと研究者は述べており、もしかしたらアナコンダの柔らかさや肌触りが彼らの性的興奮を煽った可能性もあるようです。
今回の行動は、こうしたイルカの持つ習性の一環と考えられますが、いずれの説が正しかったにせよアナコンダにとってはいい迷惑だったでしょう。
※この記事は2022年5月公開のものを再掲載しています。
参考文献
Bolivian river dolphins dangling an anaconda in their mouths have scientists puzzled
https://www.zmescience.com/ecology/animals-ecology/bolivian-river-dolphins-dangling-an-anaconda-in-their-mouths-have-scientists-puzzled/
元論文
A case of playful interaction between Bolivian River Dolphins with a Beni Anaconda
https://esajournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ecy.3724
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。