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ところが同時に、ラフレシアは「幻の花」とも呼ばれています。
その理由はラフレシアの特殊な生態にあります。
まずラフレシアは葉や茎、根をもたず、光合成もできません。
そのため他の植物に寄生することで、必要な養分を得ています。
自分で光合成しながら他の植物にも寄生する「半寄生植物」はそれほど珍しくありませんが、ラフレシアのように完全に他の植物に頼っている「全(完全)寄生植物」は稀有な存在なのです。
またほとんどの人は、ラフレシアの開花を実際に見たことがありません。
なぜなら開花は数日しか続かず、すぐに枯れてしまうからです。
さらにもともと生息域が限られているだけでなく、その個体数も減少しています。
まさにラフレシアは、知名度だけは高い「幻の花」なのです。
ちなみにラフレシアの花言葉は「夢現(ゆめうつつ)」であり、この言葉も「幻の花」を表すにはピッタリだと言えますね。
こうした背景にあって、研究チームは、マレーシア・サラワク州ナハ・ジャレー地域を調査しました。
そして、その地域に生息するラフレシアの新たな個体群から、成長過程を明らかにしたのです。
研究チームは、マレーシア・サラワク州ナハ・ジャレー地域で新しく見つかったラフレシア種の個体群を解析しました。
その結果、サラワク州の象徴種であるラフレシア・トゥアンムデ(学名:Rafflesia tuan-mudae)だと判明。
さらに、ラフレシアの成長過程を次のように観測できました。時間の順序は画像のアルファベットに対応しています。
ラフレシアの花芽の成長は、初期および若年期(直径10cmまで)で非常に遅いものの、開花直前には急激に成長すると判明。
また成長に約1年かかるものの、「開花するのは数日間だけ」という事実も再確認できました。
さらに今回は、ラフレシアの花芽の死亡率も調査しました。
その結果、場所によっては8割以上の花芽が開花に至る前に死亡していたとのこと。
ラフレシアは非常に脆弱な植物だったのです。
ポケモンでは「ナゾノクサ → クサイハナ → ラフレシア」と進化させるのは、そこまで難しくありません。
しかし現実のラフレシアのほとんどは、「クサイハナ」止まりで死んでしまうようです。
さて今回の発見により、ラフレシアの生態をより深く理解できました。
今後は、ラフレシアの死亡要因を把握し、「幻の花」をどのように保護できるか考慮していく必要があるでしょう。
※この記事は2022年3月に公開のものを再掲載したものです。
参考文献
世界最大の花・ラフレシアの新産地とその生態の解明~地域社会による生息域内保全の促進に期待~
https://www.soken.ac.jp/news/7275/
元論文
New locality and bud growth of the world biggest flower, Rafflesia tuan-mudae, in Naha Jaley, Sarawak, Malaysia
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tropics/30/4/30_MS21-14/_article
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。