女装は男の子を優しくするようです。

米国のブリガムヤング大学(BYU)で行われた2021年のよれば、3歳~5歳の男の子に女の子らしい衣装を着せると人助けに積極的になった、とのこと。

どうやら女装は男の子の精神に作用して行動パターンにも変化を与えるようです。

この研究の詳細は2021年1月8日付けで『Sex Roles』に掲載されています。

目次

  • 幼稚園児に服が与える影響を調べる
  • お姫様の服を着ると男の子は優しくなる

幼稚園児に服が与える影響を調べる

幼稚園児に服が与える影響を調べる / Credit:Canva

服は自己の内面や思想を表現する手段です。

そのため思想をコントロールしたい独裁者はときに、ファッションの取り締まりに躍起になりました。

一方で「型から入る」の言葉のように服が外側から自己の内面に働きかけることも知られています。

自分に自信がなかった人でも、最高級のスーツやドレスを身にまとい高級な腕時計やバッグを持つことで、身のこなしがいつの間にか「大物」っぽくなっていたりするからです。

しかし、服が就学前の子どもにどのような影響を与えるかは詳しく知られていませんでした。

そこで今回、ブリガムヤング大学の研究者たちは、3歳~5歳の223人の幼稚園児たちに服が与える影響を調べることにしました。

実験にあたっては「男女らしさを後押しするヒーローやお姫様の服」「性的に中立な服」「女戦士や着ぐるみのような男女らしさに反する服」が選ばれました。

(※具体的には男女らしい服にはバットマンと白雪姫、中立な服にはカボチャのデザイン、男女らしさに反する服にはワンダーウーマンとユニコーンのデザインなどが選ばれました)

結果、意外な事実が判明します。

子どもたちは通常、女の子ならば人形やおままごとセットなど女の子用のおもちゃに興味を示し、男の子はトラックや飛行機など男の子用のおもちゃを好みます。

しかし男の子に性的に中立な服を着せた場合、男らしいヒーローの服を着た時に比べて、より女の子用のおもちゃで遊ぶようになったのです。

研究者たちは、性的に中立な服が男の子に芽生え始めていたジェンダーの意識を低下させた可能性があると考えました。

一方、女の子の場合は異なり、服の種類はおもちゃの好みに影響を与えませんでした。

女の子のおもちゃへの好みはブレず、お姫様の服でもヒーローの服でも、人形やおままごとセットを選んだのです。

しかしより興味深い変化は、お姫様の服を着た男の子に現れました。

お姫様の服を着ると男の子は優しくなる

お姫様の服を着ると男の子は優しくなる / Credit:Canva

今回の研究では子どもたちのおもちゃ選びだけでなく、社会的な行動も調査対象になりました。

具体的には、子どもたちの前で鉛筆の束を落としてしまったときの反応が記録され、分析されました。

すると興味深いことに、お姫様の服を着た男の子は、他のどの服よりも、より速く落ちた鉛筆を拾い始め、集める本数も多くなったのです。

この結果は、お姫様の服は男の子の意識に影響を与え、人助けに積極的(社会的)になったことを示します。

人助けをするという意味ではヒーローの服も同じような効果が期待されましたが、予想とは異なり、ヒーローの服は男の子の人助け(社会性)に変化を与えませんでした。

研究者たちは、ヒーローは問題解決の方法として攻撃性を使用する存在として描かれるため、鉛筆拾いのような身近な人助けを後押しする効果がなかったと述べています。

また女の子の場合、どのような服を着ていても、人助けの積極性(社会性)に目立った変化はみられませんでした。

どうやら幼少期においては、好みや社会性に服が与える影響は、女の子よりも男の子のほうが大きいのかもしれません。

研究者たちは今後、服を治療薬として用いることで、性同一性や社会性に問題がある子どもを助ける手段になりえると考えています。

もしかしたら未来の世界では、女装や男装が、立派な医療目的として使われているかもしれませんね。

※この記事は2021年11月に公開したものを再掲載しています。

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参考文献

Pre-school aged boys are more likely to help others when wearing a “girly” costume compared to a superhero one
https://www.psypost.org/2021/11/pre-school-aged-boys-are-more-likely-to-help-others-when-wearing-a-girly-costume-compared-to-a-superhero-one-62142

元論文

Dressing up with Disney and Make-Believe with Marvel: The Impact of Gendered Costumes on Gender Typing, Prosocial Behavior, and Perseverance during Early Childhood
https://link.springer.com/article/10.1007/s11199-020-01217-y

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

やまがしゅんいち: 高等学校での理科教員を経て、現職に就く。ナゾロジーにて「身近な科学」をテーマにディレクションを行っています。アニメ・ゲームなどのインドア系と、登山・サイクリングなどのアウトドア系の趣味を両方嗜むお天気屋。乗り物やワクワクするガジェットも大好き。専門は化学。将来の夢はマッドサイエンティスト……?

情報提供元: ナゾロジー
記事名:「 幼稚園の男の子に「フリフリの女装」をさせると他人に優しくなった