土佐犬と土佐闘犬ってどう違うの?それぞれの特徴と歴史を解説!
土佐犬(四国犬)について
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ご存知のように「土佐」とは、現在の高知県の旧国名です。それで、本来は四国(主に高知県)に生息していた弥生犬をルーツとする日本犬のことを「土佐犬」と呼んでいました。
しかし、土佐犬をもとに改良された、新しい犬種である「土佐闘犬」と間違われることが多くなり、混乱を避けるために古来からの土佐犬は「四国犬」と呼ばれるようになりました。四国犬は1937年には国の天然記念物として登録された、6犬種しかいない日本犬の貴重な一種です。
全体はシルバーグレーの被毛に覆われ、お腹周りは白や茶色の毛色もまじった「日本犬の中で最もオオカミに似ている犬」と呼ばれる中型犬です。代表的な日本犬である柴犬よりも少し大柄な体型をしています。
もともと四国山地で鹿や猪の狩猟やそれに伴う作業に従事していた犬種なので、強靭な体力と持久力を持っています。性格は飼い主さんには非常に忠実ですが、警戒心が強く、知らない人にはふとした瞬間に噛み付いたりすることもあります。
土佐闘犬について
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より大きくて強い闘犬向きの犬を作るために、「四国犬」に「イングリッシュ・マスティフ」「オールド・イングリッシュ・ブルドッグ」「セント・バーナード」「ブル・テリア」などを交配させてつくられたのが「土佐闘犬」です。
1935年には品種が固定され、血統証が発行されるようになり、1994年には高知県の天然記念物に指定されました。
つまり、四国犬とは犬種が異なるということです。正式名称は「土佐闘犬」なのですが、省略して「土佐犬」と呼ばれることが多く、現在では「土佐犬」の方が広く受け入れられているようです。
海外では「ジャパニーズ・マスティフ」と呼ばれ、ドックショーも開かれたり、一般家庭にペットとして飼育されたりしていますが、イギリスやフランスなど一部の国では危険犬種として飼育が規制されています。
強い闘犬を作るために改良を重ねていった犬種なので、筋肉隆々の頑丈な身体つきをしています。様々な犬種の血が混じっているので個体差が大きく、体重は30kg~100kgとサイズには幅があります。JKCのスタンダードでは、オス60cm・メス55cmと体高のみが記されています。
顔の表情も、どのルーツが色濃く出るかによって様々で個体差が激しいです。噛まれても怪我をしないように、たるんだ皮膚が特徴的です。被毛はスムースコートで、毛色はレッド・フォーン・ブラック・プリンドル、胸部と足に若干の白班があるのもいます。
見た目的には四国犬の面影は全くありませんが、性格的には飼い主に対する忠実さや忍耐強さなど、日本犬らしさを受け継いでいます。
土佐闘犬は凶暴で攻撃的というイメージが強いですが、本来は穏やかで飼い主に忠実な犬なので、むやみやたらに人を傷つけることはありません。子犬の頃からしっかりと服従トレーニングと社会化トレーニングを行い、正しく管理していれば、土佐闘犬による殺傷被害は起きることはないでしょう。
ただし、土佐犬の飼育を考えるのは慎重さが求められるのは確かです。初心者の方や非力の方は飼育を諦めるべきです。なぜなら、殺傷能力のある大型犬を飼育するわけですから、責任感と犬をコントロールできる能力が求められるからです。
自治体への届出が必要な地域も多いですし、鋼鉄製の檻を用意したり、建物の出入り口を鉄柵で塞いだり、猛犬注意のステッカーを貼るなど厳重な管理も必要となります。
闘犬とは
土佐闘犬が生み出された要因となった闘犬は、世界各地で行われてきました。日本でも、鎌倉時代もしくは室町時代から「犬くい」や「犬合わせ」と呼ばれ行われてきた歴史があります。
特に、土佐藩では藩士の士気を高める目的で、四国犬同士を戦わせることが盛んに行われていました。強い闘犬を持っていることがステータスとなり、最盛期の1917年には全国から200頭以上の闘犬が集まって大会が開かれました。
高知県では1964年に土佐闘犬センターが建設され、桂浜には闘犬場が設けられて定期的に試合が行われていましたが、闘犬は虐待行為に当たるという社会的風潮もあり、1917年に営業を中止しました。
最近では闘犬そのものを禁じる国も増えていますが、日本では「声を出す・威嚇する・牙を剝くなどの行為があればすぐ退場」という細かいルールのもと行われています。
まとめ
この記事を通して、「土佐犬」とは「四国犬」と「土佐闘犬」という2種類の犬種をさして使われていること、現在では大柄で茶色い闘犬用に作り出された「土佐闘犬」の方がより一般的になっていることをお分かりいただけたと思います。