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チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世が2021年11月10日、日本外国特派員協会が開いた記者会見にオンラインで出席した。中国政府がチベットや新疆ウイグル自治区で少数民族に対して抑圧的な政策を取っている問題で、中国共産党指導部が「文化の多様性を理解できない」と批判する一方で、「新しい世代のリーダーシップで、物事は変わっていくだろう」とも話し、事態の改善は「習近平後」にずれ込むとの見方を示した。
「マルクス主義や社会主義はとても好きだ」とも話し、今でも思想面では中国共産党を評価している。かつては入党を申し出て「急がなくていい」と断られたエピソードも明かし、会場を驚かせた。
ダライ・ラマは台湾がチベットのようになるリスクを問われ「中国自体も日々変化している」などと現状認識を示した。この発言に続く形で、一時は中国共産党への入党を考えていたことを明かした。
「私が中国に行ったとき、何回か毛沢東主席や、その他の指導者に会った。当時、共産主義やマルクス主義に非常に感銘を受けていた。そこである時『私も中国共産党に入りたい』と言ったことがある。先方は『急がなくていい、急がなくていい』と答えた。そしてある時、毛沢東主席が私に『宗教は毒だ』と言った。その時『この人は本当に宗教を破壊する人なのだ』と実感した」
ダライ・ラマは1999年の米タイム誌への寄稿で、中国訪問について次のように明かしており、毛沢東主席との面会は1954~55年の出来事だとみられる。その後、1959年のチベット蜂起をきっかけにインドに亡命している。
「私が実際にマルクス主義の思想を学び、中国革命の歴史を学んだのは、1954年から55年にかけて中国に行ったときだった。マルクス主義を理解すると、私の態度は完全に変わった。マルクス主義に魅了されて、中国共産党員になりたいという願望を口にするようにさえなった」
ダライ・ラマは
「中国共産党は、毛沢東主席の時代から、その思想は良いと理解している。時々、他者を極端にコントロールしようとするところがある。思想的には、マルクス主義や社会主義はとても好きだ」
とも話し、政策面では中国共産党を批判する半面、思想面では今でも評価していることを明言している。
現在の中国共産党の指導者層に対する批判も口にした。新疆や香港の状況を念頭に置いた「国際社会は22年の北京冬季五輪のボイコットを検討すべきだと思うか」という質問に対して、ボイコットの是非には言及せずに
「新しい世代のリーダーシップで、物事は変わっていくだろう」
と応じた。さらに、チベットや新疆ウイグル自治区の状況について、次のように話した。
「私たちは自分たちの独自の文化がある。狭い見方をする中国共産党の指導者たちは、そういった文化の多様性を理解できない。中華人民共和国はひとつの民族(による国家)ではなく、漢族、チベット族、ウイグル族、その他の民族で構成されている。『中華人民共和国』が文字通り政策としても実行されるべきだ。(国名に)『人民共和国』とあるが、実際は漢族によるコントロールが強すぎる。今、物事は変化しつつある」
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)
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