今月1日、北里大学特別栄誉教授の大村智さんが、ノーベル医学、生理学賞を受賞しました。

大村さんは、有機化合物の製法や用途を研究する有機化学のエキスパートで、これまで微生物から様々な機能を持つ化合物を450種類以上も発見し、医学の発展に貢献してきました。

今回は、そんな大村教授の功績を紹介していきます。




asahi.com/笑顔で会見する大村智・北里大特別栄誉教授


10億人以上の人々を救った「エバーメクチン」の発見


1965年(昭和40年)に北里研究所に入所した大村さんは、チームのメンバーと共に、常に小さな袋を持ち歩き、ありとあらゆる場所からサンプルを採集してその一つ一つを丁寧に調べるという地道な研究を重ねていきました。

そんな研究を続けていた1975年(昭和50年)のある日、静岡県伊東市の川奈ゴルフ場から採取した土の中から、新種の放射菌を発見します。

この菌を研究した結果、昆虫や寄生虫を麻痺させる効果のある抗生物質があることが分かり、大村教授はこの抗生物質を「エバーメクチン」と名付け、そこからアメリカの大手製薬会社のメルクが、家畜の寄生虫駆除剤「イベルメクチン」を開発し、大きな効果を挙げました。

しかし、「イベルメクチン」の効果はそれだけではありません。なんと、当時アフリカなどの風土病として知られていた「オコンセルカ症(河川盲目症)」にも効果があることが判明したのです!

この「オコンセルカ症」は線虫(寄生虫)の幼虫が目に侵入して発症し、失明の原因になる恐ろしい病気で、多くの人々の目から光を奪っていました。

すると、大村さんは自身が所有していた「イベルメクチン」開発の特許権を放棄し、その結果、WHO(世界保健機関)を通じてアフリカや中南米などに住む約10億人以上の人々に「イベルメクチン」が無償で提供され、その人たちを失明の危機から救いました。

そのおかげで、2013年(平成25年)にはコロンビア政府、昨年9月にはエクアドル政府が「オコンセルカ症」の撲滅を宣言し、2つの国から恐ろしい病気をなくすことが出来ました。

その後も「イベルメクチン」はダニやほかの寄生虫による病気の特効薬として、世界中で使用され、その原料となる「エバーメクチン」は世紀の発見と言われています。

大村さんはその後も研究を続け、微生物の中から様々な機能を持つ化合物を、実に450種類以上も発見しました。

こういった功績を重ねて、今回ノーベル医学・生理学賞を受賞することが出来たのです。




asahi.com/2004年のアフリカ視察にて、現地の子どもたちに囲まれる大村さん


多大な功績をもたらした大村さんの信念


地道な研究から世紀の発見をし、ノーベル医学・生理学賞を受賞した大村さん。

受賞が決定した際の記者会見で、自分が胸に抱き続ける信念を語ってくれました。

大村さんは何を思い、何を考えて研究を続けているのでしょうか?

こちらの動画からご覧ください。



失敗を恐れず、常に人がやらないことに挑戦していったことが、今回の受賞につながったんですね。

地道に、しかし確実に前へと進む大村さんの姿勢を、見習っていきたいです。


出典:ノーベル賞の大村教授、地道な研究が世紀の大発見へ - YouTube


情報提供元: CuRAZY