ドロボウ志願


 



保育園はおやつの時間。

遊んでいた園児たちが

オモチャを片付けだす。


私も床に散らばった

クレヨンやら何やらを

拾い集めているときだった。


「せんせー、ゆうたくんが

おかたづけしてくれないのー」


ミカちゃんが、

困り顔で私のもとへ来た。


彼女に連れられて

ゆうた君のもとへ行けば

仏頂面で椅子に座っていた。


「ゆうた君、お片付けしないと

おやつ食べられないよー」


「おれ、オモチャで遊んでないもん!」


「あれ、先生、ゆうた君が

ブロックで遊んでたの

見たんだけどなー?」


「…遊んでないもん!」


ゆうた君はいったんヘソを曲げると

なかなか機嫌が直らない。


どうしたものか、と。

様子を見ながら話をする。


「あのね、ゆうたくん

嘘つきは泥棒の始まりなんだよ」


「知ってる!」


「え、じゃあなんで嘘なんてつくの?

泥棒になっちゃうんだよ?」


「だっておれ、

ドロボウになりたいもん!」


キラキラと目を輝かせて。

満面の笑みで。

この子は一体何を言い出すのだろう…。



 


 おいしいシチューの作り方


 



「じゃあ明日の

晩御飯は作っておいてね?

7時には帰ってくるから」


明日は両親ふたりでデートだって。

仲が良くていいことだけどさ。


「え~わたし料理ムリだよ~」


そう、わたしは

料理まったくできないんだよね。


「大学生にもなって料理くらい

作れなくてどうするの。


なにか自分が食べたいものある?

レシピ用意しておくから」


「うーん、

じゃあシチューが食べたいな」


……


というやり取りがあって、

今はお母さんの

レシピを見ながら料理中だ。


『まずは一口サイズに鶏肉、

野菜を切っていきます』


鶏肉と野菜ね、オーケー。


私は慣れない手で、

それでも一生懸命切る。

二口サイズになったのは

許してほしい。


『次にフライパンに油を引き、

鶏肉を炒めます。

表面の色が変わって来たら、

お野菜も投入して一緒に炒めます』


炒めるのは簡単だ。

中火でジュージューとかき回す。

そろそろかな。


「お野菜がしんなりしてきたら、

だし汁を入れます」


ん?だし?

ブイヨンみたいなものかな…

うちのシチュー、

だし汁なんて入れてたんだ。


レシピは続く。


『そこへ砂糖、酒、醤油も入れ、

落し蓋をしてしばらく煮込みます。

その後火を止めて、

冷めて味が染み込むのを待ちます』


砂糖、醤油…

へえ、これがうちの

シチューの隠し味ってわけか。


……


そして、美味しそうな

肉じゃがが完成した。


「はあ!?

どういうこと!?」


あれ、このレシピ、

裏にもなにか書いてある…



 


引き出しの裏


 



「げっ!

部屋が模様替えされてる!」


サークルの合宿から帰ってきたら、

俺の部屋のレイアウトが

変わっていた。


勝手にやられたことに

文句はあるけど、

とにかく問題なのは…


「机の位置が変わってる。

ってことは…」


引き出しの裏に

隠していたいろんなものが、

母親に見つかったってことだ。


成績表、タバコ、

彼女からもらったラブレター…


そして、

“親には見られたくないDVD”。


「まじかよ~…」


「タツヤ!

荷物置いたらこっち来なさい!」


はあ…


「こんなに単位落として!

留年したら学費出さないからね!」


ブチギレしてる母親の前に並べられる

成績表、タバコ、

彼女からもらったラブレター…


「あれ、これだけ?」


「これだけって…

他にもなにかあるの!?」


「あ、いや、

ないけど…」


あれ、DVDは?

正直あれが一番

見つかりたくなかったんだけど…


もしかしたら、

わざと見ないふりして

捨てちゃったのかな。

それはそれで気まずい…


はあ、DVD…



 


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情報提供元: CuRAZY