この3つの容器は何に使うものだと思いますか。もちろん使い方は自由ですから、持ち主が花瓶と決めれば花瓶です。また、もし置き物と決めれば置き物として使われることになります。しかし本来はコップとして使います。一般的には”パズルの壺”といわれています。これらのコップの上部には穴がたくさん開いていてとてもコップの役目は果たすことができそうにありません。飲み物を飲む方法を考えなければなりません。ですから、”パズル”という言葉がついているのです。

これらの容器に水(ジュースなどでも大丈夫)を入れて、中の水を一滴もこぼさないで飲み干す方法を考えることを目的として作られました。どの容器にも上部にたくさんの穴があいているので、このまま素直に飲んでしまうといくらかは飲むことができますが、かなりの量の水はこぼれてしまいます。

でも、確かに水を飲むことができます。一滴の水をこぼすことなく飲み干すことができます。当然、仕掛けがあります。その仕掛けに気付いた人だけが飲むことができるのです。”パズルの壺”が初めて文献に載ったのは13世紀のことだということです。そのころから多くの人たちが、このコップから水を飲む方法を考えてきたのでしょうね。


前から見ると大きな穴が6個、小さな穴が2個見えます。これを少し回転させて後ろ側を見てみましょう。


こちら側にも、大きな穴が6個と小さな穴が2個あります。横はどのようになっているのでしょうか。


やはり、大きな穴が6個と小さな穴が2個見えます。見えている穴の数を数えましたが、重複して数えている分もあります。いずれにしても、上の方にこれだけの穴があると、普通のコップのようにして水を飲むことはできません。このまま、飲んでしまうと洋服がびしょ濡れになってしまいます。


こちらのコップも、上の方にたくさんの穴があいています。穴の部分を指でふさぐのではないかと考える人もいるようですが、すべての穴を指でふさぐのは無理のようです。


こちらのコップにも、上の方に穴があいています。こちらは穴の数は少ないですが、穴が大きいです。やはり、穴を指でふさぐのは無理なようです。

どのコップも外から見ているだけでは、全く飲み方がわかりません。コップの中はどのようになっているのでしょうか。


コップの中に穴がひとつあいています。わかりやすいように、赤い色を付けています。他のコップの内側はどうなっているでしょうか。


こちらのコップの底の方にも穴があります。


こちらのコップの底の方にも穴が見えます。3つのコップの底の方には同じように穴があいています。偶然同じような場所に穴があいていたわけではありません。これらの穴は水を飲むうえで重要な役割を果たしているのです。


水は上の方の小さな穴から飲みます。飲むというよりは吸い込むといった方がわかりやすいかもしれません。小さい穴に唇をつけて吸い込むと、勢いよく水が口の中に入ってきます。

仕掛けはこうです。コップの底の方にあいていた穴と、上の方に空いていた小さな穴はコップの内側でつながっているのです。コップの内側に水が通る道があるのです。小さな穴から吸い込むことにより、その道を通って水が吸い上げられるのです。道はストローのような役割をしているのです。目には見えない道(管)をコップの内部に作ってしまうなんて、ものすごい技術です。

日本にも、茶碗の内部に仕掛けがある”教訓茶碗”というものがあります。教訓茶碗は、茶碗の下の方に穴があいています。この穴は表側についているので誰にでも見えます。茶碗にお茶を入れて普通に飲むことができます。ところが、淹れる量が一定量を超えると、その穴から、折角入れたお茶がすべて流れ出てきてしまうのです。国は違っていても、職人は同じようなアイデアを思いつくものなのでしょうか。

このパズルの壺については、「パズラート パズルの回帰線」という書籍にも掲載されています。残念ながら今はもう店頭で購入することはできませんが、図書館などにはあるかもしれません。


パズルの壺の仕掛けも面白いのですが、「パズラート」という書籍自体にも 面白い仕掛けが隠されています。

(秒刊サンデー:わらびもち)
情報提供元: 秒刊SUNDAY
記事名:「 天才にしか飲むことが許されないコップを使う方法!分かったら天才!かも