この2頭は旭山動物園(旭川市)で飼育されているオランウータンの親子で、リアン(母)とモカ(娘)です。リアンは、モカが遊ぶの見ながら必要な時にはさりげなく手を差しのべています。旭山動物園での動物の展示は行動展示といわれるもので、動物が本来持っている能力や動きを、ほぼありのままに見せてくれています。

屋外にあるオランウータン舎には、運動場(写真左側)と飼育舎(写真右側)があります。運動場と飼育舎をつなぐ高さ17mの塔があり、夏期開園中は塔を渡るオランウータンの様子を観察することができます。写真から17mの高さを感じていただけるでしょうか。オランウータンが塔を渡り始めると、周りから、「すごいなぁ~」とか「大丈夫かなぁ」などという声が聞こえてきます。

オランウータンはもともと樹上生活をする動物なので、17m位の高さは平気です。動物園のスタッフの方が、「おしっこ、うんちがかかるかもしれないので注意してください。」と声掛けをしてくれます。オランウータンたちは、下に人がいる時にわざとおしっこやうんちをかけることがあるそうです。


一人で塔を渡るモカです。最初はリアンも一緒だったのですが、モカがついつい色々なことに気を取られてしまいリアンが先に行ってしまうことになりました。2015年生まれのモカの体は、まだまだ小さくて、大丈夫かなぁと本気で思ってしまいます。でも心配はいらないようです。モカは塔を渡るのが好きなのか楽しそうにわたっていました。


運動場ではリアンが待っていました。リアンはロープを握っています。モカが手を出しているので、モカに握らせようとしているのです。母親らしい行動だと思いませんか。よくよくリアンの行動を見ていると、リアンはモカに対して決して過保護ではないのですが、気付かないふりをしながらモカが何をしようとしているのかをしっかりと見ているのです。

リアンが、母親としての愛情と責任をもって子育てをしていることを強く感じました。旭山動物園には何度も行っているのに、このような光景を見たのは初めてでした。いえ、きっと今までは気付けなかったのでしょう。


リアンはここでもモカが落ちてしまわないように、手を掴んでいます。人は言葉を話すことによってコミュニケーションを取りますが、オランウータンには言葉はありません。でも、お互いに何を考えているのかわかるのでしょう。なにかとても不思議な気持ちになりました。

飼育舎にいる時に、モカはリアンの背中を引っ張って、「運動場に行こうよ。」というような仕草をしました。すると、リアンはおもむろに立ち上がり、モカと一緒に塔の方へと向かいました。ちゃんと意思の疎通ができているのです。確かに、リアンはお母さんなのですね。そして、モカを大切に育てているのですね。



リアンとモカが塔を渡る様子を見ると、樹上生活をする動物だということがよくわかります。リアンが木の切れ端を道具として使っている姿には驚かされました。動画上で聞こえている鳴き声は、オランウータンのものではなく、隣の敷地で飼育されているシロテナガザルの鳴き声です。

時折、動物の行動を見て、「芸を仕込まれているんだな。」という声を聞くことがあります。そういう時には、動物たちは仕込まれた芸を見せているのではなく、それがその動物本来の動きだということを言ってしまいそうになります。

旭山動物園は現在夏期開園中ですが、冬季開園中には、厳しい寒さの中で活動するアザラシの姿など を見ることもできます。

(秒刊サンデー:わらびもち)
情報提供元: 秒刊SUNDAY
記事名:「 旭山動物園のオランウータン、わが子への気配りがはんぱない!